「柔軟仕上げ剤」で頭痛、悪心……ニオイの苦情が急増中、癒やしの香りが「スメハラ」に!

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柔軟仕上げ剤のニオイが問題に(shutterstock.com)

 もうすぐやってくる梅雨――。洗濯物が外に干せない時期は、部屋干しで発生する、あの嫌なニオイが気になるもの。そんな悩みを解決してくれるのが、洗濯物に良い香りをつける「香りつき柔軟仕上げ剤」だ。

 洗濯中や干しているとき、さらには身につけている間もフンワリといい香りが続き、「癒やされる」と大ブームになった。今やスーパーやドラッグストアに何十種類もの商品が出回り、フレグランス感覚で楽しむ愛用者も多い。

 その火付け役は、2000年代半ばごろに輸入されてブレイクした、P&Gの香り付き柔軟仕上げ剤「ダウニー」。それまで柔軟仕上げ剤といえば微香性のものがほとんどだったが、2008年に花王、P&G、ライオンの大手3社も香り付きの新製品を発売し、現在も市場は成長し続けている。

隣家の洗濯物のニオイで体調悪化?

 しかし、市場の拡大に伴い、自分では気づかないうちに周囲の人にニオイで不快な思いをさせてしまう、いわゆる「スメハラ(スメルハラスメント)」問題が多発しているようだ。

 「柔軟剤のニオイが苦しいけど、通勤列車の中で逃げ場がない」「職場の同僚が常に柔軟剤臭くて頭が痛い」といったSNSへの書き込みも目にするようになった。

 以前はスメハラといえば体臭や香水のつけすぎなどが原因だったのだが、ここ数年で新たに柔軟仕上げ剤が加わったようだ。国民生活センターに寄せられた「柔軟仕上げ剤のニオイ」に関する相談件数は、2008年度が14件だったのに対し、2014年度は167件と10倍以上に増加。

 そのうち、体調が悪くなったなどの「危害情報」は100件以上にのぼる。

 相談内容としては、本人が使ったケースよりも隣家など他人が使用した柔軟仕上げ剤に対するものが遙かに多い。

 たとえば「マンション隣室の洗濯物から、強烈な柔軟仕上げ剤の香りが漂って、頭痛や止まらないせきに悩まされている」「隣人の洗濯物のニオイがきつ過ぎて窓を開けられず、換気扇も回せない」「飲食店の店員が柔軟仕上げ剤を使いすぎていて気持ちが悪くなり、食べたい気持ちがなくなる」といった事例だ。

微香性の数倍の化学物質を発する

 人によっては不快になるだけでなく、健康被害まで引き起こす柔軟仕上げ剤のニオイ。背景としては、香り成分に含まれている化学物質や化合物による影響が考えられる。

 これらが皮膚や鼻など粘膜から吸収されると、喉の痛みなどアレルギーに似た症状がみられることがあるのだ。

 ご存じのように、市販されている柔軟仕上げ剤や消臭剤や洗剤などに使われている「香料」は、化学的に合成されたもの。天然のアロマやハーブなどを使うと高価になってしまうためだ。

 国民生活センターでは、香りの強い柔軟仕上げ剤を使った場合、微香性のものを使った場合、そして柔軟仕上げ剤を使わない場合について、洗濯物を室内干ししたときの空気中の揮発性有機化合物の量を調べた。

 すると、微香タイプの柔軟仕上げ剤を使用した場合と、使用しなかった場合では約20μg/m3上昇したのに対し、強い香りのある柔軟仕上げ剤を使用した場合では有機化合物の量が約70〜140μg/m3上昇。微香タイプに比べると3〜7倍という結果になった。

2割以上の人が使いすぎ!

 それに輪を掛けるのが、柔軟仕上げ剤の使いすぎだ。日本石鹸洗剤工業会の調査によると、柔軟仕上げ剤の量を洗濯物の重量に応じてきちんと決めている人は2割程度でしかなく、「計量していない」という人も16%いた。

 さらに香りを長持ちさせようと、標準使用量の2倍以上使用している人が23%もいたという。

 工業会では「柔軟仕上げ剤を使用する理由が、香りや柔らかさといった個人的な感覚と嗜好によることが多いため、使用量のばらつき大きくなると考えられる」と分析しながらも、「柔軟仕上げ剤を入れ過ぎると洗濯物の吸水性が低下する」として、適量を使用することを推奨している。

 好きな香りに包まれると癒し効果があるのも事実だが、同じ香りでも心地よくなるのか、悪い気分になるのか、感じ方や身体的な反応には個人差がある。

 そもそも柔軟仕上げ剤の本来の目的は、繊維を柔らかく仕上げ、静電気を防止することであって「香り」は付加的なものにすぎない。使う場合はそのことを忘れずに使用量を守り、周囲への配慮も怠らないようにしたいものだ。

 香りの柔軟仕上げ剤にハマってしまった人は、もう一歩進んで「手作り」をお勧めしたい。クエン酸、グリセリン、好みのアロマオイル数滴と水といった材料で、洗濯物がほんのり香る柔軟仕上げ剤が簡単にできる。

 自由にカスタマイズできるし、人にも環境にもやさしい。ネット上に多くのレシピが紹介されているので、トライしてみてはいかがだろうか。
(文=編集部)

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