乙武氏の不倫騒動で注目される「障害者の性」〜“ホワイトハンズ”の射精介助サービスをどう思う?

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目標はホワイトハンズの存在自体をなくすこと

 ホワイトハンズは、日々の射精介助サービスの他、さまざまな活動を展開している。

 たとえば、性に対する支援・介助の方法を正しく学ぶ講座「障害者の性」基礎研修、社会的な啓蒙の場となる「生と性のバリアフリーフォーラム」、「性労働の社会化」をテーマにしたトークイベント「セックスワーク・サミット」、性風俗と福祉をつなぐ「風俗福祉基礎研修」、ヌードデッサン会の「ららあーと」、性の専門職を育てる「臨床性護士検定」や「デリヘル検定」と多彩だ。

 性労働の専門誌『セックスワークジャーナル・ジャパン』『デリヘル六法』の発行、童貞・処女問題を明るくマジメに考える学校「ヴァージン・アカデミア」の運営も。
 
 昨年は、デリヘルの待機部屋で行う無料生活・法律相談事業の「風テラス」も始まっている。

 また、現場の声を行政に伝えるアドボカシー(政策提言)活動も熱心だ。たとえば、障害者権利条約が保障する「障害者の性と生殖の権利」項目を障害者福祉に携わる支援者や専門職の教育・研修課程に採択することを厚労省に要望している。

 身体介護と性サービスのガイドライン制定や、障害者福祉サービスの介護保険の適用もすでに要請ずみだ。

10年ぶり、30年ぶりに射精して歓喜

 これらの諸活動はすべて、性を社会の視点で捉え、社会的な手段で解決する性の公共の実現につながるアクションであることは明らかだ。したがって、ホワイトハンズが実践している射精介助は、障害者を全人間的に蘇生させる性的介護サービスともいえる。

 50代や60代で生まれて初めて射精したとか、10年ぶり、30年ぶりに射精したなどと歓喜する利用者も少なくないからだ。

 坂爪代表理事によれば、目標はホワイトハンズの存在自体をなくすこと、つまり射精介助をいつでも・どこでも・誰でも受けられるように社会制度化することだ。社会性も倫理性も安全基準もなく、性的な快楽だけを狙う性風俗とは、ゴールがまったく異なる。

 さらに坂爪代表理事は、著書『セックスと障害者』(イースト新書)の中で、障害者の性の健康と権利を尊重する社会を実現するためのガイドラインとして、「生と性のバリアフリー憲章」を提案している。

 「生と性のバリアフリー憲章」によると、障害者に性があるのは「当たり前」だ。障害者にも健常者と同じように射精・月経、恋愛・セックス、結婚・出産・育児の意思も能力も権利もある。

 性は、その人らしく生きるための自尊心の基盤、社会参加の原動力になる。障害者の性の問題は、支援者の性の問題であり、社会の性の問題そのものなのだ。

 つまるところ、障害者の性介護は、その人の人間関係や生活環境をどのように改善するかに尽きるのではないか? 

 適切な性教育と性の健康管理。性の尊厳と自立。生と性のバリアフリーの実現。射精介助は、その糸口になるかもしれない。
(文=編集部)

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