熊本地震の翌日から被災者の「心のケア」にDPAT・精神医療チームが出動!

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トラウマが被災者の胸を重く押し潰す

 DPATが取り組んでいる「心のケア」は、被災者にどのような精神的な効用や心理的な影響を及ぼしているのだろうか?

 震災直後、被災者の精神状況や心理状態は、あたかも嵐の海に投げ出された小舟のように翻弄され、混乱を極める。

 頻発する余震へのショックと恐怖感、家族や家を失った悲痛、見通しが立たない未来への失望感や無力感……。そして、失業や収入減による経済的な不安や、慣れない避難所生活のストレスなど、数え切れないほどの複雑な心労が幾重にも深く折り重なる。

トラウマ(心的外傷)が、被災者の胸を重く押し潰すのだ。

 しかも、避難所生活や仮設住宅生活が長期化すればするほど、不自由な生活環境や多難な対人関係が被災者を襲い続け、被災者はさまざまな心理的・肉体的な変調をきたす。

 たとえば、頻脈(心拍が早くなる)や除脈(心拍が遅くなる)、呼吸困難、血圧や血糖値の上昇。さらには、過食や食欲減退、便秘など内臓機能の低下、睡眠障害、悪夢、慢性的な疲労感、抑うつ感。

 そして、ホメオスタシス(恒常性)の乱れや免疫力の衰退による心身の健康状態が優れず、発症リスクの増大などに曝される。その結果、過剰な不安感や不眠などの過覚醒症状、トラウマの回避症状、フラッシュバック(目撃・記憶の追体験・再現視)が誘発される。

 これらが1カ月も続けば、「ASD(急性ストレス障害)」やPTSDの発症につながるリスクが一気に高まる。

 このような危機的な精神状況や心理状態を抑制しながら、被災者のトラウマをいやしつつ、生きるモチベーションを強化し、被災者の再起させるのが、DPATの「心のケア」だ。

 DPATの「心のケア」は、コミュニティの維持・再生に対応する被災者への心理的支援から、保健師、精神保健福祉士などのエキスパートによる見守り支援、精神科医による精神疾患支援まで広範囲に及ぶ。

 被災者のトラウマを癒しつつ、生きるモチベーションを強化し、被災者を再起させるDPATの「心のケア」。そのポテンシャリティは大きい。

 被災地では、依然厳しい状況が続いている。DPATの「心のケア」も、DMATの救急治療支援も、被災者に勇気と希望をもたらしているのは確かだ。
(文=編集部)

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