飲料水は5日分の備蓄を(shutterstock.com)
今月14日の夜に震度7の激しい揺れを観測した「熊本地震」。16日にはマグニチュード7.3の本震が起き、震度1以上の地震は20日の時点で実に700回近くにもなる。
ライフラインの復旧が進まない中、避難者・自宅生活者のそれぞれにとって深刻なのは水不足だ。生活に必要な水をすべてボトルウォーターや給水に頼るとなると、どうしても水分摂取は不足し、衛生面も行き届かなくなる。
阪神・淡路大震災後のアンケートでも、「災害時に困ったこと」の第1位が「生活用水の確保(82.5%)」、第2位が「電話がつながらない(81.4%)」、第3位が「飲料水や食料の確保(71.5%)」だった(平成7年度・西宮市民意識調査)。
災害時に備え水を常備しておくことは言うまでもないが、水分不足は二次的な健康被害を防ぐポイントになることも知っておきたい。
熊本県は20日、「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)」などの身体的負担による熊本地震の震災関連死が県内で計11人に上ることを明らかにした。血液の流れが悪くなって血の塊が血管に詰まってしまうエコノミークラス症候群は、水分不足が大きく関係してくる。
飲料水の不足に加え、避難所はトイレも不足しているので、排尿の回数を減らすために水分摂取量を減らしてしまうという悪循環にも陥ってしまう。
では、災害に備えた水の備蓄、また、災害時の水の確保や利用法はどうしたらいいか?
最低5日を生き延びる水は不可欠
まずペットボトルなどによる飲料水の備蓄は、ひとり分1日3ℓを目安に、できれば5日分(15ℓ)は確保したい。これまでの災害後の状況から推察すると、約3日後には給水車が回るので、それまで自力でまかなうようにしたい。
備蓄量と賞味期限を見比べながら随時消費し、使い足す方法がお薦めだ。もし期限が切れても、手洗いや洗面には十分使えるので、置き場所があれば捨てずに保管してもいい。また、軽いポリタンクを給水用に用意しておけば重宝だ。
避難時の水分補給は一気に飲むのではなく、1時間に体重1㎏あたり2〜2.5mlを目安に飲むと効果的で、エコノミークラス症候群の予防にもなる。
体重50㎏の人なら1時間あたり100〜125mlが目安だ。利尿作用があるコーヒーや紅茶は、トイレが近くなるので飲み過ぎに注意したい。
また、平時から風呂の残り湯を溜めておくと、被災時には、手洗いや洗面、身体拭き、洗濯、掃除などに用いることができる。浴室の湿度上昇が気にはなるが、掃除をマメにすることでカバーしたい。
深夜電力と空気熱でお湯を沸かす「エコキュート」は、その構造上、大きな貯水槽を備えており、500ℓ前後の水が確保できるというメリットがある。非常時の取水方法だけはしっかり確認しておきたい。
ちなみに水洗トイレを流すには、1回あたり10ℓの水が必要だ。たとえ下水道が壊れずに機能していたとしても、貴重な生活用水をトイレで使い果たすわけにはいかないため「完全復旧まで水洗トイレは使えない」と考えた方が良い。
自宅で生活できる状況なら、避難所や外の仮設トイレの負担を減らすためにも、凝固剤や簡易トイレで最低3日間、可能なら7日間は自宅内処理する準備をしておきたい。できるだけ人に気兼ねなくトイレに行ける環境を作ることは、自分や家族の健康にとっても大事だ。