全日本仏教会は猛反発しているが……
リーズナブルな定額料金とチケットをネット通販するスマートさが受けて、「お坊さん便」の滑り出しは、まずまずのようだ。
しかし、好事魔多し! 公益財団法人・全日本仏教会(斎藤明聖理事長)が横槍を入れた。平成24年12月現在、105の仏教団体が加盟している全日本仏教会は、日本の仏教界唯一かつ最大の連合組織。仏陀の和の精神を社会に広げつつ、仏教文化の宣揚と世界平和に寄与することをビジョンに掲げている。
全日本仏教会によれば、「お坊さん便」は伝統的な葬式・法要への挑戦になる、料金の定額化はお布施(人々の感謝の気持)の精神に反する、宗教行為を商品化した例はない、宗教行為の商品化は相応しくないなどの理由から、「お坊さん便」を強く批判し、猛反発している。
その一方で、海外メディアの関心も高い――。
12月27日付の『テレグラフ』は、アマゾンで38人のカスタマーが5つ星のうち3つ星の評価をつけているので、利用者にある程度は受け入れられていると伝えた。『テレグラフ』とBBCは、東京で開かれた初の葬儀関連の大規模見本市「エンディング産業展」を報じながら、日本人のお寺離れや仏教離れを指摘した。
ベネズエラの『ラテン・アメリカン・ヘラルド・トリビューン』は、「お坊さん便」は、さまざまなライフスタイルを持つ人や、特定のお寺の関わりがない人の需要に応えられると評価した。
現在、お寺は全国におよそ7万5000箇寺もある。だが、後継者不足、檀家の減少、少子高齢化による地域コミュニティの崩壊などが逆風になり、衰退の一途を辿っている。およそ2万箇寺のお寺が住職のいない空き寺。25年以内にお寺の4割のおよそ3万箇寺が廃寺に追い込まれる恐れがある。
紀元前3〜4世紀頃のスリランカの原始仏教の経典をひも解けば、「仏教とは心を清める教えと実践である」とある。「お坊さん便」が日本人の寺離れを食い止められれば、空き寺を減らせるだけでなく、心を清める仏教の教えや葬儀・法要の意義を伝える好機になるだろう。「お坊さん便」は、仏教界の起死回生、仏教再生の起爆剤になるかもしれない。
(文=編集部)