禁止薬物のメルドニウムとは何か?
シャラポワ選手は、遺伝的に不整脈や糖尿病の家系であるため、2006年から医師の処方でメルドニウムを服用してきたという。
メルドニウムは、ラトビアの製薬会社グリンデクスが、ミルドロネ−ト、ミルドロナーツ、クアテラインなどの薬品名で販売する狭心症や心臓障害の抗虚血薬だ。主にリトアニアやロシアで普及しているが、厚労省やFDA(米国食品医薬品局)は認可していない。
WADAによれば、メルドニウムは「2016年版ドーピング禁止表国際基準」のカテゴリーS4(ホルモン調節薬および代謝調節薬)に分類され、慢性心不全、心筋梗塞、気管支肺疾患、神経変性疾患に有効性があるとされている。
一方、2016年1月、WADAは、監視プログラムに基づく調査を重ね、アスリートの持久力や回復力の向上などの効果があると認定したため、禁止リストに加えた。
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、2016年に入ってメルドニウムによるドーピング違反が発覚した選手は、2014年ソチ五輪のフィギュアスケート団体の金メダリスト、エカテリーナ・ボブロワ選手(ロシア)をはじめ、昨年の東京マラソン男子優勝のエンデショー・ネゲセ選手(エチオピア)など6人がいる。
ロシア・シベリア地方のニャガン出身のシャラポワ選手は、2001年に14歳でWTAツアーでデビュー後、2004年、17歳2カ月で全英オープンを制覇、2005年に世界ランキング1位に。その後も四大大会で優勝を重ね、2012年に全仏オープンを初制覇。生涯グランドスラムを達成した。シングルスでツアー通算35勝、四大大会5勝。世界ランキングは7位だ。
記者会見では「4歳からプレーを始め、テニスを深く愛してきた。自分の仕事に責任とプロ意識を感じて生きてきた。競技人生を終わらせたくない。もう一度チャンスがもらえることを希望している」と現役への闘志を燃やしている。
ドーピング違反を指摘された多くの選手は、疑惑を否定し、出場停止処分を受けて引退する。だが、シャラポワ選手は、過失ながらドーピング違反を認めつつ、コートへの並々ない愛着と情熱をファンに伝えている。
シャラポワ選手の処分は暫定的なもので、医学的な必要性が証明されれば8月のリオデジャネイロ五輪への出場の可能性も残るが、ロシアスポーツ界のドーピング問題の闇は深そうだ。
(文=編集部)