4月から開始される「患者申出療養制度」は、難治患者に対する大きな欺瞞だ!

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保険制度だけで患者は救われない?shutterstock.com

 昨年6月、政府は2016年度から「患者申出療養」(仮称)を創設すると表明、厚労省は11月の中医協で制度の詳しい資料を発表した。それは政府の素案からは一部後退した内容もあったが、全国の難治疾病に苦しむ患者からは多くの希望と期待を寄せられるものだった。筆者は政府の声明を報道する共同通信からコメントを求められ、仕組みづくりの過程で骨抜きにされないよう願っていると答えた。

4月から始まる患者申出療養の実態が見えてきた

 ところが今年2月24日のNHKクローズアップ現代「広がる“混合診療”患者は救われるのか」を見て、筆者は初めて患者申出療養制度の実体を知り、その本質が既存の制度と何も変わっていないことがわかり、愕然とした。制度のスタート1か月前でも厚労省のホームページで患者申出療養の情報は、中医協で発表した2015年11月までのものしかない。

 制度の枠組みでは、患者が申し出た保険外治療は、日本で前例がない場合、国が設置した専門家会議で、原則6週間以内に患者申出療養として認めるか否かの結論を出すことになっているが、番組によると、審査の判断基準はその治療に一定の有効性や安全性などが確認でき、かつ保険収載を前提に臨床研究が行えるものに限定されるというのである。

 これは、現在の保険外併用療養費制度で評価療養とされる先進医療を認定する判断基準とほとんど同じである。ただ先進医療が、医師の提案によって国の定めた医療機関できわめて厳格な条件に合致した患者を対象に臨床研究を行う点が違うのみである。

 入口は二つになったが、出口は一つで、狭き門であることに変わりはない。政府の決定では、患者申出療養は、患者の立場で混合診療を大幅に拡大するものだったはずである。

 患者申出療養の判断基準が先進医療のものと同じになるのは当然で、妥当だと考える人も多いと思う。しかし、患者申出療養の本質は、難治患者の治療である。評価療養が治療より研究に重点が置かれているのに対し、治療を最優先とする医療なのである。そうなるはずの患者申出療養が厚労省官僚によって骨抜きにされ、内閣も通過した。

 臨床研究重点の判断基準と治療最優先の判断基準が、患者にとってどれだけ大きな違いか。番組では、先進医療への樹状細胞ワクチン療法の臨床研究が紹介されていた。現在は大腸、すい臓、乳がんなど5種類のがん患者を対象に行っているが、国から有効性をさらに明確にするためにより厳しい基準で臨床研究を行うよう求められたため、今後はすい臓がんのみを対象に他のがん患者は対象から外すことになるらしい。医師は保険収載のためにはやむを得ないがジレンマを感じるという。この例が示すように、医師本位の先進医療では、難治患者は救われないのである。

がんになってもあきらめない妊活・卵巣凍結 費用は卵巣摘出に約60万円、保管は年間10万円
インタビュー「がんでも妊娠をあきらめない・卵巣凍結」後編・京野廣一医師

がん患者への抗がん剤による化学療法は妊孕性(妊娠のしやすさ)を低下させる。がんにより妊娠が難しくなる患者を支援するため、2016年4月に「医療法人社団レディースクリニック京野」が、治療前に卵巣を凍結して保存しておく「HOPE(日本卵巣組織凍結保存センター)」を設立すると発表した――。医療法人社団レディースクリニック京野理事長の京野廣一医師に卵巣凍結の仕組みについて訊いた。
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