生活習慣病が50歳以上で急増するのは極めて自然
がんを含めた生活習慣病が50歳以上の人に急増するのは、いってみれば、極めて自然な現象なのだ。医療をはじめとするさまざまな人間科学の進歩・普及は、間違いなく私たち人間(個人)の生活に快適さをもたらしてくれている
だが、果たして、人類という哺乳動物の“種の保存”に本当に前向きに貢献しているといえるだろうか。戦後、日本人の平均寿命は30年近く延びたが、いったいこの延びのどれほどが医療によるものだろうか。ある計算によると、おそらく1年分にも満たないのではないかという。
寿命の延びを大きく支えたのは、経済的裕福さからくる安全な食事、空調や上下水道の整備、交通手段の発達、教育の浸透など、社会のインフラの発達によるとする見方が正しいだろう。医療者としてはちょっと寂しい数字だが――。
私も50歳に近づいた1995年時点を振り返ってみると、いったん死んだつもりで次の新たな仕事に取りかかるべきタイミングかもしれないと思いつつ、精一杯の挑戦を始めていた。およそ200年昔の伊能忠敬がそうであったように。
ああ、ある展覧会で見た、里帰りした『伊能図(大日本沿海輿地全図)』の見事さにはため息すら出なかった。地図の正確さのみならず、全国津々浦々、離れ小島を含めて歩き尽くしたことは実に驚異的である。しかも、あれが50の手習いだったとは! ぜひあやかりたいあこがれの人物だ。