連載「病理医があかす、知っておきたい“医療のウラ側”」第8回

ニホンザルには閉経がない~日本人の長寿は“自然の摂理”に反している!?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
31988-2.jpg

ニホンザルには閉経がないという

 ずいぶん前の話だが、高崎山のサルの話が新聞の紙面をにぎわした。あるグループのボスが、別グループの「おばあちゃん猿」に惚れて自分のグループを飛び出したため、今では一兵卒になりさがってしまったという話である。

 そして、その魅力あふれるメスは人でいえば70歳に相当するという。

 この話には納得できないため、一言物申す。

 ある深夜番組の特集を見て、東武動物公園にある動物園の園長さんの話に驚かされた。ニホンザルには閉経がないという。閉経という現象が見られる哺乳動物は、人と飼い犬、飼い猫を除くと、自然界ではゾウが唯一なのだそうだ。

 ただし、閉経になったメスは自ら群れを離れて餓死してゆくらしい。 その深夜番組の主題は、“だから、長い老後のセックスをエンジョイしましょう”だったのだが――。

 確かに、50歳で閉経を迎えた後も、それまでの生殖可能年齢と同じくらい生きる現代の日本人にとって、この主題が大きな意味をもつことは否定しない。

生殖年齢を過ぎたら生物は死ぬ運命にある

 さて、2つの話をつなげてみよう。上の計算は明らかにおかしい。まだ子どもを産めるこの「メス猿」は大いなる中年の魅力、強烈なセックスアピールを発揮していたに違いない。サルを人の年齢に換算する際に、日本人の平均寿命である80歳を当てはめた点が問題なのだ。

 日本人が平均して80年以上も生きることが、“自然の摂理”に反していると考えるべきではないだろうか。人の寿命がほぼ閉経の年齢だった昔の日本や現在の途上国のほうが、理に適っているのかもしれない。

 急流を遡上したサケは、産卵・射精すると死亡する。セミも交尾・排卵を終えると生涯を閉じる。越冬するカミキリムシはいるそうだが、そうした非効率は自然界では例外的なのではなかろうか。

堤寛(つつみ・ゆたか)

つつみ病理相談所http://pathos223.com/所長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。2017年4月~18年3月、はるひ呼吸器病院・病理診断科病理部長。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集①〜⑥』(三恵社、電子書籍)など。

堤寛の記事一覧

堤寛
胃の不快感の多くは実は「機能性ディスペプシア」という病気
日本初の『胃弱外来』開設」後編:巣鴨駅前胃腸内科クリニック・神谷雄介院長

前編『大病院を転々した末にたどり着く「胃弱外来」 初診から約1カ月で8割の患者の症状が改善』

胃痛やもたれ、むかつきなどの症状があっても、検査の結果異常がないと診断され悩みを抱える患者さんが少なくない。こうした胃の悩みを抱える人たちのために開設したのが胃弱外来。患者さんの多くは新しく認知された『機能性ディスペプシア』や『胃食道逆流炎症』などの疾患だ。その具体的な治療法について話を伺った。

Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

くにたち駅前眼科クリニック院長。1986年、東京…

高橋現一郎

近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授…

西郷和真

フィットネスアドバイザー。JT東京男子バレーボー…

村上勇