「焦げ」による食感や香りも味の大事な要素だが…(shutterstock.com)
カリッと香ばしく揚がったフライドポテトや、パリッと焼けた餃子の皮、こんがりしたトースト……。食材を調理したとき、好ましい香りや食欲をそそる焦げ色が生まれるのは、食材に天然に含まれている成分が熱によって反応し、新たな成分が生成されるから。「焦げ」による食感や香りも、味の大事な要素であることは間違いない。
しかし、天然成分からできた「焦げ」でも、一定以上の量を摂ると健康に悪影響を及ぼす場合がある。
内閣府・食品安全委員会の作業部会は2月1日、高温で揚げたり炒めたりした野菜などに多く含まれる発がん性物質「アクリルアミド」の摂取と日本人の健康への影響について、「リスクは極めて低いが、動物実験の結果から懸念がないとはいえない」との最終評価案をまとめ、注意するよう促した。
120℃以上で発がん性物質が!
アクリルアミドは、合成樹脂や染料などの原料として工業的に生成されている物質だ。毒物及び劇物取締法上の劇物に指定され、職業暴露や事故によって大量に吸収すると神経毒性・肝毒性があり、国際がん研究機関(IARC)は1994年に「ヒトにおそらく発がん性がある物質(グループ2A)」に分類している。
そんなものが、なぜ食べ物に含まれるのか?
実はアクリルアミドは、食品中のアスパラギンというアミノ酸とブドウ糖や果糖などの糖質が合わさり、120℃以上で加熱されると化学反応によって生成されてしまうことがわかっている。ただし、その量はごく微量だ。そして、同じ食材でも、煮たり蒸したりした場合は、アクリルアミドは作られない。
食品中のアクリルアミドについては、2002年、スウェーデン食品安全庁とストックホルム大学が、「炒める」「焼く」「揚げる」などの調理をしたジャガイモや穀類の加工品に含まれていると発表して注目された。以来、全世界で食品中のアクリルアミドの毒性と食品の安全性について研究が開始。当時は日本でもポテト系のスナックが問題視され、メーカーはアクリルアミドの低減研究に奔走しなければならなかった。
肝心の「摂取量」と「がん発生率」の疫学調査はどうか? 2007年にオランダで「アクリルアミド摂取が発がんリスクを上げる」という研究結果は出ている。しかし一方で、「発がん性がある」という見解は動物に大量投与する実験から導き出されたものであり、人における発がんリスクは上昇しないという調査結果も多い。
食品安全委員会はこうした疫学調査を詳細に検討し、その結論として「動物実験の大量投与と同様に、人もアクリルアミドを大量摂取するとおそらく発がんリスクが上がるだろう」と結論づけた。しかし、日常生活レベルの摂取量での発がんリスク上昇は確認されていないため「大量摂取をしないように」という呼びかけにとどめている。