GCが活躍するのは、放火事件だけではなく、毒物や違法薬物を特定するのにも大いに役立っている。青酸カリなら、試薬によって呈色反応を見る簡易な検査法もあるが、本格的な分析にはGC/MS(ジーシー・マス)と呼ぶガスクロマトグラフィー質量分析計を使って毒物の種類を解明している。
また、GC/MSは、覚せい剤などの違法薬物の検出にも威力を発揮する。有機溶媒を使って尿から抽出した成分を分析すれば、覚せい剤を使用したかどうかを判定できる。もちろん、尿検査ではなく、押収した覚せい剤そのものを調べることもある。
人気TVドラマ『科捜研の女』の法医研究員・榊マリコが現場に落ちていた白い粉をGC/MSで分析するシーンがある。『CSI:科学捜査班』や『ボーンズ』でも登場するので、観た人もあるかもしれない。
その他、GC/MSなら、爆破事件に残された爆発物の微量の破片や爆発残滓からでも、火薬や爆薬の種類や量を適確に分析できる。巧妙な爆破犯もまったくお手上げだ。
ひと昔まえなら、江戸っ子は「火事と喧嘩は江戸の花」と煽り立てた。だが、「宿取らば一に方角、二に雪隠、三に戸締り、四には火の元」と気を引き締めたのも江戸っ子。地震、雷、火事、親父。親父の権威は、とうに地に落ちたが、「マッチ1本、火事の元」は暗黙の掟だ。「対岸の火事」と油断せず、寒さが募る冬こそ、火災の恐ろしさを忘れるべからず。GCも、榊マリコもしっかりと目を光らせている!
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。