スッと治すから「ストナ」、後が楽だから「コーラック」……オヤジギャグな薬のネーミング

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市販薬のネーミングは奥深い…Radu Bercan / Shutterstock.com

 年末年始の暴飲暴食期が始まり、胃腸薬の服用が相対的に増える季節だが、20歳以上の男女555人が回答した『胃腸薬に関するアンケート』(ジャストシステム調べ)の集計結果がなかなか面白い。今回は「ネーミング効果の実態」が読み取れる回答事項を紹介しよう。

 いずれも胃腸薬の服薬経験がある男女が対象だが、「名前から最も効きそうな市販の胃腸薬はどれですか?」の問いに『ガスター10』(第一三共ヘルスケア)と回答した層が25.6%で首位。これは濁音名のインパクトが奏功した結果だろうか。次いで「名前が最も覚えやすい市販の胃腸薬は?」と訊かれて「キャベジン」(興和株式会社)が1位獲得の25.6%、こちらは昭和発の貫禄勝ちか、平易で秀逸な販売名が世代を超えての印象を残すのだろう。

 もう一つの質問「最も親しみやすい名前の市販胃腸薬は?」で25.0%の筆頭支持を得たのが『太田胃散』(株式会社太田胃散)。愚直にも社名そのままで勝負しながら、別項「最も頼りにしている胃腸薬は?」の問いでも20代から最高の支持を得ているのは名付け親冥利に尽きるだろう。

 では、薬の信頼度や売り上げを左右する名称はどうやって生まれるのか?

薬は「三つの顔を持つ」、その名前の由来とは?

 まず、知っておきたいのは、一つの薬が「三つの名前を持つ」という大前提だ。①化合物名、②一般名、③販売名、の薬名三変化というわけだが、これ噛み砕いて表わせば、①戸籍上の本名、②仲間内の愛称、③市場での芸名、的な解釈もあながち間違ってはいないだろう。
 
 たとえば、血圧を下げる医薬品『アーチスト(錠)』(第一三共製薬)の化合物名は、『(±)-1-(carbazol-4-yloxy)-3-[[2-(o -methoxyphenoxy)ethyl]amino]-2-propanol』と長く、落語の寿限無みたいで、とても憶えられたものではない。実際、斯界の規則(=IUPAC命名法)に基づいて決められる化合物名は味気ないため、医療現場で用いられることはまずないという。

 では、販売名『アーチスト』の②一般名は何かといえば『カルベジロール(Carvedilol)』であり、これは開発企業がWHO(世界保健機関)に申請して認められた名称だ。

 また、他社のαβ遮断薬の一般名が『塩酸アモスラロール』(販売名:ローガン)とか『塩酸アロチノロール』(同:アルマール)など、語尾の「ロール」が一緒なのは、同じ系統に分類されるが為の事情。学会での発表時などでは、この一般名が用いられる例が多いそうである。

 そして医療現場でも最も一般的に使われているのが、やはり③販売名である。前掲の『アーチスト』と同じ有効成分(カルベジロール)を含みながらも、『アーチワン』(沢井製薬)、『アニスト』(東和薬品)、『アテノート』(大洋薬品)などと、各社各様、当然ながらどれもが特許庁から商標登録の認可が下りた販売名である。

オヤジギャグ的ネーミングにも深い想いが……

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