ドラッグストアや薬局で気軽に買える「市販薬」にも副作用はあるRadu Bercan / Shutterstock.com
薬には、医師の処方箋が必要な「処方薬」と、ドラッグストアや薬局で気軽に買える「市販薬」の2種類がある。
処方薬は、医師が一人ひとりの患者の症状に合わせて、薬の量や種類を調節するものだ。医師の指示に沿って服用することが求められ、自分の勝手な判断で量や期間の変更をしてはならない。また、ほとんどの処方薬には医療保険が適用されている。
一方の市販薬は、OTC(Over the Counter)医薬品とも呼ばれ、自分の判断で購入することができる。その購入費用は全額自己負担。市販薬は処方薬よりも効果が弱いと言われているため、「市販薬には副作用がほとんどない」と勘違いされやすい。
風邪をひいて病院に行くと、熱や咳、くしゃみ、鼻づまり、喉の痛みなど、それぞれの症状にピンポイントに作用する薬が数種類処方される。市販薬の場合、症状別の薬もあるが、ほとんどが上記の症状を抑制する成分が少しずつ配合されている総合感冒薬だ。これを服用することは、自分の症状とは関係ない成分も体内に入れることになる。
薬はその毒性の強さによって、弱い方から、普通薬、劇薬、毒薬という3つの種類に分類される。普通薬は比較的安全域(有効量と致死量の開き)が広く、市販もされているが、市販されていない劇薬と毒薬は、少量でも効果が強く現れることから、用量に対してより慎重な取り扱いが必要だ。ただ、普通薬であっても、用法・用量を間違えれば死に至ることもある。
数年前に鎮痛剤であるロキソニンがOTC化されたが、それ以前は劇薬に分類されていた。現在この薬は普通薬になっているが、分類が変わっただけで、実際その成分は何も変わっていない。
「沈黙の臓器」がダメージを受ける
前述したように、一般的に処方薬のほうが市販薬より作用が強く出るといわれている。たいてい市販薬に含まれる有効成分のほうが弱いからだ。しかし、具合が悪くなったからといって、安易に市販薬を服用することは避けたほうがよい。
2012年8月に発表された厚生労働省による市販薬の副作用に関する報告では、過去5年間で副作用が発現した症例は1220件、死亡はそのうち24名、重症患者は15名だった。死亡者の半数の12名は総合感冒薬(風邪薬)に起因する肝機能障害や肺炎、中毒性表皮壊死融解症などを起こしていた。ただ、起こった副作用すべてが報告されるとは限らないため、実際にはそれ以上の件数があると考えられるだろう。
副作用のひとつに肝機能障害があるが、肝臓には外部から吸収される食物や薬をすべて処理するという役割があり、薬による影響を真っ先に受けてしまう。また「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、ダメージを受けてもなかなか症状が現れないため、ほとんどの場合、自覚症状が出たときにはすでに遅く、治療の手立てがなくなっている。
市販薬は容易に入手できるため、具合が悪くなるとあまり深く考えずに飲んでしまう人も多い。ある男性は、週が始まる月曜日になると腹痛が起こり、20年もの間、正露丸を常用していた。1回3錠を1日3回(月4回)とすると、合計8640錠飲んできたことになり、当然、肝臓への影響が懸念される。このように胃腸薬、あるいは頭痛薬を定期的に服用していると、処理できなかった成分が蓄積していく可能性もある。
たとえ市販薬であっても、症状を軽減する代償として肝臓などの臓器に負担をかけ、ダメージを与えるおそれがあり、場合によってはその服用が死因にもなることを心に留めておいてほしい。