連載「死の真実が“生”を処方する」第18回

「酔って寝ている」を放置は超危険! 普通に話していた人が突然死に至る急性硬膜下血腫の恐怖

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意識があるうちに急いで病院に!(shutterstock.com)

 日本では年間に約2%の人が、頭部外傷によって入院治療を受けているそうです。また、不慮の事故で亡くなる最も多い死因は、頭部外傷です。脳はヒトのあらゆる行動の司令塔。ここが破壊されると、呼吸や心臓を動かすこともできなくなります。

 脳は豆腐のように柔らかく、その外側は硬い膜で覆われています。これを「硬膜」と呼びます。そのさらに外側が頭蓋骨です。頭蓋骨の厚さは0.5~1.2cm程度。硬膜はどんなに強く引っ張っても破けません(だから硬い膜というのでしょう)。そして頭蓋骨も、よほどの力が加わらないと壊れません。

硬膜下血腫は男性や高齢者に多い

 脳に大きな外力が加わって、脳そのものが破壊される状態を「脳挫傷」といい、脳と硬膜の間、すなわち硬膜の下に出血する状態を「硬膜下血腫」と呼びます。急性硬膜下血腫は、成人の重症頭部外傷の圧倒的多くを占めます。入院を要する頭部外傷の約3%を占めるといわれ、その多くが交通事故や転倒・転落によるものです。

 脳に大きな外力が加わって、硬膜の中で脳が激しく動けば、脳と硬膜をつないでいる血管(架橋静脈)が切れて、ここから出血します。硬膜と脳の間には、わずかな隙問しかありません。出血量が少なければ特に目立った症状は出ませんが、出血量が増えるにしたがって脳と硬膜との隙間は埋まってしまい、血液によって脳自体が圧迫されます。その結果、脳が破壊されて、意識障害や死に至るのです。

 急性硬膜下血腫では、頭部外傷を負ってから徐々に出血するので、受傷直後は意識障害や体の一部が動かない状態(麻痺)が見られません。ところが、出血量が増えるにしたがって徐々に脳が圧迫され、しばらくして嘔吐や呂律が回らない、意識がもうろうとするなどの症状が現れ、最終的に重篤な状態になります。このように、しばらく意識が保たれる期間のことを「意識清明期」と呼びます。

 したがって、この間に頭部のCT撮影などによって正確な診断がされ、血腫を除去するなどの適切な治療が行われれば、命は助けられます。しかし、この間に治療が施されなければ、残念ながら死に至るケースが多いのです。さっきまで話していた人が突然、倒れて死んでしまう――。ということが起こるので、「talk and die」と呼ばれます。

 私は以前、硬膜下血腫で亡くなった方について、どのような状況で発生したかを調査しました。その結果、男性や高齢者に多いという特徴がありました。

 受傷原因は、転倒が60.5%と最も多く、以下、殴打・打撲が21%、交通事故が17.4%と続きました。頭をぶつけた場所は、屋外の地面が55.3%と最多、続いて室内の床面が15.8%。そして、受傷時に作用した外力の方向で最も多いのは、後頭部から前方(55.3%)です。

 このように硬膜下血腫は、転倒するなどして後頭部を打撲するという状況で発生しやすいことが分かりました。目まいやふらつきで後方へ転倒する、スポーツ中に頭を打つなど……このような状況は、しばしばあると思います。この時に外力が強いと、硬膜下血腫を発生することになるのです。転んで後頭部をぶつけた場合には、軽く考えずに、必ず医療機関を受診してください。

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