広がるがん治療の選択肢~放射線治療「トモセラピー」のメリットは?

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 ビジネスパーソンにとって、この放射線治療は選択の価値がありそうだ。では、トモセラピーは、他の放射線治療法とどのように違うのだろうか?

 「トモセラピーは、他の治療機器と比較すると、一度に照射できる範囲が広いという特長があります。例えば腫瘍が2つある場合、一度の照射が最大10cm×10cmの範囲の機器の場合、2つの腫瘍がその範囲に収まっていなければ、2つの治療計画が必要になります。トモセラピーの場合、頭足方向に最大135cm照射可能なので、離れたところに散在する病巣や全脊椎への照射でも、一度に照射することができます。よって、治療計画は1つで済み、単純計算すると治療期間も費用も2分の1になるでしょう。また、治療機器でありながらCT撮影も可能な機器であるため、治療直前にCTで体内の状態をまず確認してから照射に移行することができ、高精度な治療が可能です」

 離れたところに腫瘍が散在する場合、すでにがんが全身に転移していると考えられるが、その場合は緩和治療のみになるのだろうか?

 「必ずしもそうとは限りません。1つが原発で、1つが転移というケースが多いと思いますが、ステージによっては両方とも根治を目指した治療となる可能性もあります。その場合は、放射線治療だけでなく、外科・化学療法といった治療法との組み合わせになると考えられます」

 とはいえ気になるのは、その副作用だ。トモセラピーには副作用はないのだろうか?

 「副作用は皆無ではありません。照射位置や照射量によっては頭髪の抜けや火傷の症状が出ることがあります。しかし多くの場合、放射線治療一般で見られる、回復可能なものです」

トモセラピーの治療費はどれくらいかかるのか?

 実際、治療を受けたいと思っても、治療費によっては検討の余地がある。トモセラピーの治療には100~150万円ほどはかかるといわれている。しかし、ほとんどの場合、保険が適用される。

 「放射線治療には、主に、病気を治すことを目的とした“根治的治療”、完全に治らないまでも、症状を軽くすることを目的とした“緩和的(または姑息的)治療”があります。加えて、病気の再発を防止する“”予防的照射”や、他の治療と組み合わせて行う“術前・術後照射”で使用されることもあります。基本的には、トモセラピーはこれらのすべてに保険適用が可能です」

 トモセラピーを受けたいと思った場合、2つの条件をクリアする必要がある。一つは「トモセラピーの治療が受けられる病態かどうか」、もう一つは「保険適用での治療が受けられるかどうか」だ。保険については広く適用されているため、クリアできることが多いが、治療できる病態でないケースもある。

 トモセラピーは万人にとって選択可能な治療法とはいえないが、がんと診断されたとき、一つの選択肢として捉えておくことは決して損ではないだろう。
(文=編集部)

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