シリーズ「DNA鑑定秘話」第22回

世界で初めて「精液解析」で強姦殺人犯を逮捕したピッチフォーク・ケリー事件

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 この事件は、DNA指紋法を一躍有名にした。DNA指紋法は、ジェフリーズが1985年に『ネイチャー』に発表した鑑定法で、現在行われているDNA鑑定法の礎を築き、親子関係の鑑定など、犯罪捜査以外の分野でも応用されている。この事件で利用され、血痕や精液斑の判定に高い個人識別能力を示したDNA指紋法とは、どのような鑑定法なのか?

 DNAには、ある特定の無意味な塩基配列が何度も繰り返す部分があり、繰返しの回数は個人によって違う。この繰り返す塩基配列をミニサテライト、または、VNTR(variable numbers of tandem repeat)と呼ぶ。このミニサテライトの繰り返しの回数によって、DNAの塩基配列の長さが変わる性質を利用した鑑定法、それがDNA指紋法だ。

 精液班痕の精子のDNAは、通常の細胞核にあるヒストンと異なり、特殊な核タンパク質であるプロタミンによって強固に保護されている。したがって、精液班痕の精子のDNAは、安定性が高く、ある種のタンパク質分解酵素でも分解できない。つまり、今回の事件のように、被害者の膣内体液と混合した精液からでも、制限酵素を使って精子の核DNAだけを取り出すことができる。

 真犯人ピッチフォークの精子のDNAは、このようにして特定され、事件の解決につながった。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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