強いか弱いかは遺伝による生まれつき(shutterstock.com)
シカゴ大学などが行なったPET(陽電子放出断層撮影)によるアルコールの臨床研究によれば、アルコールを飲むと、大脳辺縁系に3種類の反応が現れることが分かった。大脳辺縁系は、食欲、性欲、睡眠欲、意欲などの本能、情緒、夢、記憶や自律神経の活動に深く関わっている重要な部位だ。
研究の結果、大脳辺縁系が反応して陽気になる人、大脳辺縁系に反応せずに気分が沈む人、その中間で雰囲気によって酒をうまく感じたり、まずく感じたりする人に分かれた。
ALDH2の働きは生まれつきの遺伝子が決めている
世の中は広い。底なしの酒豪もいれば、おちょこ1杯で顔が真っ赤になる人もいる。それはなぜか?
アルコールは、アルコール脱水素酵素(ALDH)によって有害なアセトアルデヒド(CH3CHO)になり、アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド分解酵素(ADH)によって無害な酢酸(CH3COOH)に分解される。
ALDHという酵素には、ALDH1とALDH2がある。アセトアルデヒドを主に分解するのはALDH2。ALDH2の働きが強い人は、アセトアルデヒドを分解する速度が速いので、アルコールへの耐性が高い、つまり酒が強い。かたやALDH2の働きが弱い人は、アセトアルデヒドの分解速度が遅いのでアルコールへの耐性が低い、つまり酒が弱い。
ALDH2の働きが、人によって強かったり弱かったりするのはなぜか? ALDHという酵素は、20種類あるアミノ酸がつながったタンパク質。ALDHのアミノ酸がどのような配列になるかを決めているのは、遺伝子だ。ALDH2は534個のアミノ酸からできているが、ALDH2の504番目のアミノ酸はグルタミン酸になっている。
ところが、ALDH2の働きが弱い人、つまり酒が弱い人は、ALDH2の504番目のアミノ酸がリジンになっている。わずか1個のアミノ酸の配列の違いで、酒が強い弱いの分かれ目になる。実に不思議だ。