2013年2月には、オーストラリアで、ドーピングに犯罪組織が深く関わっているという報告書が政府によって作成され、世界に衝撃を与えた。同年開催のWADAの国際会議では、警察や税関などと連携したドーピングの摘発体制を作ること。違反した選手の資格停止期間を、原則2年から、4年に延長すること。選手の情報の収集強化などが決定事項となっている。
しかし、選手やコーチと検査機関の果てしないいたちごっこが続いているのが現状だ。そこに輪をかけているのが犯罪組織の関わりだ。
近未来のドーピングとして、運動能力を向上させるために遺伝子を人為的に導入する「遺伝子ドーピング」なども臨床研究段階にある。もともとは、筋力の低下をきたす難病患者のために開発されているものが、スポーツの世界に取り入れられようとしている。本人の身体の一部となるため、検出はますます困難となり、そもそもドーピングと呼べるのかさえ分からないとの意見もある。
スポーツに限らず個人の能力を高めたい、実績を作り、金や名誉を得たいという欲望には限りが無い。
しかし、組織的にこの欲望につけ込み、莫大な利益を上げる行為や国威発揚のために選手一人ひとりを物のように扱うその姿勢はやはり批判されなければならない。
(文=編集部)