第1に、口臭や体臭がする。腸管壁から血液中に吸収された腸内ガスは、肺へ移動し、肺呼吸によって排気され、口臭になる。また、血液中の腸内ガスは、皮膚呼吸によって排出され、体臭の原因にもなる。
第2に、肝機能が低下する。肝臓は、腸内ガスを無毒化する働きがあるが、腸内ガスが過剰になれば、解毒能力に負荷がかかるために、肝機能が衰えやすくなる。
第3に、便秘になり、肌が荒れる。腸内ガスが腸内に滞留すると、悪玉菌が増え、腸の整腸作用が悪化するため、便通が悪くなり、肌が荒れやニキビの原因になる。
第4に、がんになるリスクが高まる。腸内ガスには、ニトロソアミンやフェノールなどの有害な発がん性成分も含まれているので、おならをガマンして溜め込むと、とくに大腸がんに罹るリスクが高くなる。
おならは、ゆめゆめガマンせず、腸内をいつもスッキリ快適にキープしておこう!
悪玉菌を抑え善玉菌を増やそう
臭くない、良いおならにするために、どうすればいいのか?
結論は腸内細菌の悪玉菌を抑え、善玉菌を増やすことに尽きる。腸には300種類以上、およそ100兆個の腸内細菌が生息している。大腸菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌などの悪玉菌は、タンパク質や脂肪を分解し、インドール、スカトール、アンモニア、硫化水素など、腐敗臭の強い有毒ガスを誘発させる。一方、ビフィズス菌、アシドフィルス菌、乳酸菌などの善玉菌は、腸内を酸性化して悪玉菌を減らすので、腸内環境を整える。
悪臭の最大の要因は、動物性タンパク質の肉類、硫黄化合物が多いニラ、ニンニク、ネギなどの臭いの強い食べ物なので、食べすぎは控えよう。腸内のバランスを整える乳酸菌が豊富なヨーグルトや乳酸飲料は、乳糖不耐症による消化不良に注意したい。乳糖不耐症とは、乳糖(ラクトース)を消化する酵素が少ないために、牛乳を飲んでおなかが痛くなったり、ヨーグルトを消化できない症状だ。
食物繊維を過度に摂らない。サツマイモ、ジャガイモ、ゴボウ、納豆、キャベツなどの食物繊維の多い食材は、腸内で分解・消化されることが多いため、おならを多く発生しやすい。
よく噛んで食べる、早食いしない。よく噛めば、唾液が多く分泌され、余分な空気を吸い込まずに飲み込める。かたや噛む回数が少なく、早食いすれば、余分な空気を体内に取り込むので、腸内ガスが発生しやすくなる。さらに、胃に負担がかかり、食べ物が腸内に残りやすくなるため、腐敗が進み、腸内ガスが滞留しやすくなる。このような唾液と一緒に空気を飲み込む量が多くなると、おならやげっぷがよく出る。この症状を空気嚥下症(くうきえんげしょう)とか、呑気症(どんきしょう)と呼ぶ。
炭酸飲料やビールを飲み過ぎない。炭酸飲料やビールに含まれる炭酸は、体内で炭酸脱水酵素によって二酸化炭素と水に分解され、空気と混じりやすくなることから、おなら、げっぷ、しゃっくりが出やすくなる。ちなみに、キシリトールを配合したキシリトールガムを長時間噛むと、空気を多量に飲み込む。しかも消化しにくいので、腸内ガスが発生しやすいことも覚えておこう。
便秘になりにくい生活習慣を心がける。便秘を予防するために、お通じをガマンしない、水分を補給する、適度な運動を行うなどの習慣を心がけよう。ヨーグルトや乳酸飲料、バナナやハチミツなどに含まれるオリゴ糖も効果がある。
ストレスを溜めない。ストレスを抱え込むと、自律神経のバランスが乱れ、副交感神経が働かなくなるために、胃腸の働きが衰える。休日などのオフタイムは、スポーツや趣味を楽しんだり、お風呂でリラックスしたり、家族で食事をゆっくり摂ったりして、心身をリフレッシュしよう。トイレへ行く前に簡単にできるガス抜き法がある。太腿を持ち上げながら、階段を一つ飛ばしで上がる運動だ。大きく足を上げると、股関節周りの血流がよくなり、腸の動きが活発化するので、腸内ガスがスムーズに肛門向かう。
睡眠を十分に取る。疲労の蓄積やストレスなどで睡眠不足が重なると、自律神経のバランスが乱れやすくなり、腸内の消化・吸収が阻害されることから、腸内ガスが発生しやすくなる。
臭いおならが頻繁に出る時は病院で診断を
便秘やおならが多い時は、漢方薬などの市販薬も試してみる。薬局で薬剤師に相談し、自然なお通じを促す漢方便秘薬や、腸内のバランスを整える乳酸菌配合の整腸薬など、症状に合ったクスリを選ぼう。
病院で診察を受ける。臭いおならが頻繁に出たり、腹痛や下痢が長い間続いたりする時は、主治医に相談するか、内科や消化器科を受診しよう。たとえば、大腸の粘膜に潰瘍やびらんができる潰瘍性大腸炎をはじめ、腸管の内壁の一部が外側に飛び出す大腸憩室症、膨満感、胃もたれ、胃痛、胸やけ、吐き気、げっぷなどを慢性的に繰り返す慢性胃炎、精神的ストレスや情緒不安定などが原因で慢性的な腹痛、下痢、便秘などを起こす過敏性腸症候群などは、腸内ガスが溜まりやすいため、おならが多発する。
また、大腸がんが進行すれば、便秘がちになり、メタンチオール(腐った玉ねぎのような臭い)のおならがよく出るから要注意だ。その他、腸などに炎症が起き、腹痛、下痢、嘔吐感、発熱などを伴うクローン病も疑われる場合もあるので、侮れない。このような症状が少しでもあれば、必ず早めに病院で診察を受けてほしい。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。