法律でいじめを厳しく取り締まると、いじめ・ネットいじめが減る――。そんな新たな研究が、『JAMA Pediatrics』(オンライン版10月5日)で掲載された。
法律でいじめを厳しく取り締まる米国の州では、高校生のいじめ・ネットいじめの減少がみられるという。研究によると、米国教育省ガイドラインの少なくとも1項目を法律に取り入れている州では、取り入れていない州に比べ、いじめが24%減少し、ネットいじめが20%減少したことがわかった。
「いじめ対策法が有効であることを示唆している」と、研究を率いた米コロンビア大学(ニューヨーク市)のMark Hatzenbuehler氏は述べている。
いじめやネットいじめと法律の因果関係は、明らかにされていない。しかし、「今回の研究はどの法律をどのように併用するのが最も有効であるかを検討するうえで土台となる」とHatzenbuehler氏は述べている。そして、法律は、いじめを防止する包括的戦略において不可欠な要素の一つだと付け加えている。
「いじめの定義」や「法律の適用範囲」が有効
米国では、高校生の5人に1人が最近12カ月以内にいじめを受けたと報告。モンタナ州を除く49州にいじめ防止の法律がある。今回の研究では、25州で公立・私立高校に通う6万3000人強のデータをレビューし、その情報を米国教育省ガイドラインおよび州法と照らし合わせた。
そして、4カテゴリー16項目(法律の目的と定義、学区の政策展開と見直し、いじめの報告義務などの方針、その他の情報伝達・訓練・法的支援の戦略など)に着目した。
その結果、特定の項目が、いじめの減少に特に有効であることが明らかにされた。たとえば、「いじめの定義」や「法律の適用範囲」が定められている法律は、効果が高かったという。
いじめと法律の問題を初めて体系的に検討
いじめの発生率は州により差がみられ、調査対象とした州のうち、1年以内にいじめ・ネットいじめを受けた生徒の比率が最も低かったのはアラバマ州(各14%、12%)、最も高かったのはサウスダコタ州(27%、20%弱)だった。
米ワシントン大学教授のTodd Herrenkohl氏は、「今回の研究はいじめと法律の問題について初めて体系的に検討したもので、その結果には説得力がある」と述べる一方、法律だけでは不十分だと指摘する。
「いじめに対する認識を高め、措置につなげるという部分で州法は重要だが、有効な予防・介入プログラムによってその政策を実行し、足並みを揃えることが不可欠だ」と、同氏は強調している。
日米では、いじめの性質や内容には違いがあるだろう。日本でも、いじめと法律の有効性、さらには有効な予防・介入プログラムの実行に関して精査と分析を急ぐべきだ。
(文=編集部)