シリーズ 腸内細菌を徹底解剖 第7回

アメリカ人150g、日本人200g、ケニア人520! ウンコの量でわかる腸能力!

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食物繊維不足の現代日本人、1日の大便量が戦前の約半分に shutterstock.com

 食物繊維とウンチの親しい関係について話そう。まずはクイズです。あなたが生涯、排泄するウンチの量はどれくらいか?

 正解は約5トン! 健康な成人の1日の排泄量を平均約200gとして80年生きれば、ざっとこの量になる。5トンといえば、なんと中型トラック1台分だ。ずいぶん多いと思うのではなかろうか。

 だが、戦前の日本人の1日の排泄量は平均約400gだったので、当時と比べると半減している。その理由は、食物繊維の摂取量の減少だ。戦前は1日約30g、現在は半分の15gしか摂っていない。

 前回に紹介したデニス・バーキット博士の研究では、アフリカの農民は食物繊維を1日に60~80gも食べていることがわかった。バーキット博士は、さらに食物繊維を多食するアジア諸国の疫学調査を行い、食物繊維と糞便量の関連性を丹念に分析した。

 その結果は、ケニア520g、マレーシア477g、ウガンダ470g、イラン349g、ペルー325g、インド311g、中国209g......。

 国別の糞便量を見ればわかるように、食物繊維をよく食べる国の人ほどウンチが大きい。「その国の人の健康状態は、便の大きさを見ればわかる。便が大きい国では病院は小さくてすむ。便が小さければ大きな病院が必要だ」。バーキット博士のまさに蘊蓄(うんちく)を込めた証言は、強い説得力がある。

 ちなみに、アメリカ人の糞便量は日本人の4分の3程度の150g。排泄量が少ないのは、脂肪、タンパク質、糖質が多く、食物繊維が少ないからにほかならない。だが、食事の欧米化は、日本人の糞便量を確実に減らしている。

ウンチの60%は水分。残りは腸内細菌や細胞の死骸

 さて、ここで再びクイズだ。日本人の大腸は、アメリカ人の大腸より長いか?

 毎日、大量の食物繊維を食べる草食動物の腸は長く、食物繊維を食べない肉食動物の腸は短いといわれる。例えば、肉食動物のライオンの腸は全長7m、草食動物のヒツジは31m。食物繊維を多く摂る日本人、少ないアメリカ人。大腸の長さに差がありそうに思える。

 従来の検査技術では、生きている人の大腸の長さを正確に測れなかったが、3D-CTを活用すれば生理的な状態にある正確な長さを計測できるようになった。マサチューセッツ総合病院ハーバードメディカルスクールの研究チームが、日本人650人、アメリカ人650人の合計1300人の大腸の長さを3D-CTを使って測った。結果は、日本人の平均は154.7cm、アメリカ人の平均は158.2cm。人間の腸の長さは、食物繊維の摂取量とは無関係のようだ。

 食事後、便が排泄されるまでの所要時間は、24~72時間。人の便の成分は、水分、新陳代謝によって排出された腸内細胞、大腸菌などの腸内細菌、胆汁などの体内分泌液、未消化の食物繊維、体内毒素などだ。その内訳は、水分60%、腸壁細胞の死骸15%~20%、細菌類の死骸10%~15%、食べ物の残りかす5%だ。

 便の色は、通常は黄土色か茶色。この色は、腸内細菌が胆汁のビリルビンを代謝してできたステルコビリンという胆汁色素の色だ。ステルコビリンは、河川の糞便汚染の生物化学的マーカーとして利用されている。

 便は摂取した食物の種類やコンディションなどによって、色調や形状が変化する。肉食などの動物性タンパク質を多食すると褐色がかり、細く小さくなる。穀物、豆類、野菜類、食物繊維を多食すると、腸内のpHが低下するため、便が酸性化して黄色がかり、太く大きくなる。

 食物繊維は、腸の中のビフィズス菌や乳酸菌、クロストリジウム、バクテロイデスなどの腸内細菌の働きによって、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの短鎖脂肪酸という発酵物質をつくる。その結果、腸内のpHが6以下に下がるので、腸内の酸性度が高まり、腸内細菌の活動や増殖がますます活発化する。腸粘膜が活性化し、免疫力が強まるため、発がん物質やがんのプロモーターとなる二次胆汁酸の発生が弱まり、体外に便として排出することにつながるのだ。

「腸内細菌を徹底解剖」バックナンバー

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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