副鼻腔炎の治療で睡眠時無呼吸が改善?shutterstock.com
慢性副鼻腔炎の手術を受けると睡眠が改善されることが新たな研究で示された。今回の研究では、慢性副鼻腔炎患者の15%に閉塞型睡眠時無呼吸がみられたが、睡眠障害の有無にかかわらず、手術後の患者は生活の質(QOL)が改善され、よく眠れるようになったと報告しているという。
副鼻腔炎とは、いわゆる蓄膿症のこと。副鼻腔は、顔の骨のなかにある空洞で、一般的に鼻の穴と言われる鼻腔の奥に位置する空間。症状としては、鼻閉(鼻づまり)、鼻汁、嗅覚障害、前頭部に頭重感があるなど。風邪などに引き続いて炎症が起きる急性副鼻腔炎と、数カ月以上にわたって症状が持続する慢性副鼻腔炎とがある。
副鼻腔炎の治療法としては、薬物療法、鼻吸引、鼻洗浄、ネブライザー療法、手術療法などがあるが、今回の研究はこの手術療法でのデータによる。
研究著者である米ユタ大学(ソルトレークシティ)のJeremiah Alt氏によると、「副鼻腔炎患者の主な訴えは、睡眠不足、疲労感、倦怠感である」という。米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)の耳鼻咽喉科医Jordan Josephson氏は、副鼻腔や鼻の疾患はいびきや睡眠時無呼吸につながることが多いが、見逃され、放置されがちだと指摘している。今回の研究は「JAMA Otolaryngology -- Head & Neck Surgery」オンライン版に9月10日掲載された。
副鼻腔炎手術で心理面や睡眠障害が改善
閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠時無呼吸のなかで最も一般的なタイプで、睡眠中に睡眠中にのどや上気道が繰り返しふさがれることで短時間の呼吸停止が何度も起こる障害。米国のデータでは、この閉塞性睡眠時無呼吸が、中年層の約4~9%で、肥満の人により多くみられている。
Alt氏らは、慢性副鼻腔炎と睡眠時無呼吸がともにみられる患者に対する外科手術の効果を調べるため、副鼻腔炎の手術を受けた400人以上を対象にアンケートを実施した。うち60人が睡眠時無呼吸を併存しており、手術後、これらの患者には心理面や睡眠障害を含めていくつかの評価項目に改善が認められた。
睡眠時無呼吸と副鼻腔炎の関連はよくわかっていないが、米セントジョセフ病院(カリフォルニア州オレンジ)のPeter Fotinakes氏は、「眠っているときは鼻で呼吸することが多い。それができないと、口が開き、舌が自由になる」と述べ、それにより気道が塞がれやすくなる可能性があると指摘している。副鼻腔炎のみられる患者はすぐに手術が必要というわけではなく、まずは薬剤治療を試すべきだが、手術の効果は大きいとAlt氏は話している。
睡眠障害の側の視点からも、まずはステロイド点鼻薬や抗ヒスタミン薬などの薬剤治療を試みるべきだとFotinakes氏は述べ、あらゆる非侵襲的な方法で効果がなければ、何らかの外科的治療を検討する必要があるとしている。Josephson氏によると「最新の手術は、全身麻酔を用いずに外来でほとんどの処置を済ませることができ、苦痛が少なく、多くの場合は翌日に仕事や学校に行くことができる」という。
睡眠時無呼吸と副鼻腔炎について新たな関連性の可能性が出てきた。
(文=編集部)