赤ちゃんが成長してくると、羊水の中で盛んに動いたり、赤ちゃんの手や足が子宮にぶつかったりする。「あ、いま動いた!」とお腹の中の赤ちゃんの存在がはっきりと感じられる。この胎動が始まるのは、赤ちゃんの骨格や筋肉が発達する時期で、初産で妊娠20週頃、経産で妊娠16週頃だ。
胎動を感じる時期は、皮下脂肪の厚さ、羊水の量、胎盤の位置などで個人差がある。この時期を過ぎて胎動がなくても心配はいらない。超音波検査で赤ちゃんが元気に育っているのが確認できれば問題はない。
赤ちゃんは、胎動が始まる前から、お腹の中で様々な動きをしている。最も早く現れるのは、全身をピクッとさせる驚愕(スタートル)という動きだ。妊娠7週頃になると神経が発達し、12週頃からから指しゃぶりを始め、20週頃になると羊水の中を自由に動き回る。
手足を曲げ伸ばしたり、身体をぐるぐると回したり、呼吸やしゃっくりをしたりする。胎動では感じられないが、顔の表情を動かしたり、指しゃぶりしたり、羊水を飲んだり、おしっこをしたりする。赤ちゃんは、お母さんが胎動を感じるずっと前から動いている。胎動は「元気だよ!」という赤ちゃんからお母さんへのメッセージなのだ。
赤ちゃんは全身で世界を感じ取ろうと準備している!
胎動を感じる前から始まっているのは、このような運動だけではない。脳の成長に伴って、様々な感覚器官もどんどん発達している。赤ちゃんの五感の成長を見てみよう。
最も早いのは、7週頃に口の周辺に現れる皮膚の感覚(触覚)。12週頃から始まる指しゃぶりは、触覚が発達した何よりの証拠だ。
次に発達するのは嗅覚。23週頃には、匂いをキャッチする鼻と匂いを認識する脳がつながり、匂いを感じる準備が整う。
24週頃には耳と聴覚を司る脳がつながるので、耳が聞こえるようになる。たとえば、お皿が割れるような大きな音で、胎動が始まることもある。生まれてすぐの赤ちゃんでも、お母さんの声と他の女性の声を区別できる。赤ちゃんは、音を聞いているだけでなく、音を聴き分けられるのだ。
脳の仕組みがほぼ完成する24週頃は、全身をコントロールする働きが発達するため、痛みを感じる痛覚も働き始める。
30週頃には、舌と味を認識する働きが完成する。羊水に甘い味の成分と苦い味の成分を混ぜて、味覚を調べた比較研究によると、甘い味を混ぜた羊水をよく飲むことが分かった。この頃には、赤ちゃんは、大まかな味の差を感じ取っているのだ。
五感の中でも、視覚の発達は最も遅れる。お腹の中は真っ暗のため、赤ちゃんは、モノを見る必要がないからだ。ただ、24週頃には、目と視覚を司る脳はつながっている。お腹の中に向かって強い光を当てると、赤ちゃんは、光の方向に顔を向けることから、弱いながらも見る力が備わっていると考えられる。ただ、出生時でも、ぼんやりとモノは見えているが、視力は0.02~0.03程度だ。
赤ちゃんは、生まれてから外の世界に対応できるように、お腹の中で絶えず動き回ってウォーミングアップしている。胎動は生まれる前の赤ちゃんの準備体操だ。
(文=編集部)