ひとりが泣き出すともうひとりも?! leungchopan/PIXTA(ピクスタ)
ご長寿姉妹で一世を風靡した「きんさん・ぎんさん」を始め、おすぎとピーコ、マナカナ、スポーツ選手では荻原健司・次晴兄弟――。
双子の有名人はすぐに頭に浮かぶが、身近な知り合いとなると、どうだろうか? 双子ゆえに注目されやすくて人気者になるからなのか、一般的には双子はやはり少数派だ。
ところが、将来はそうでもなくなるらしい。ご存じのとおり、日本では急速に少子化が進行している。その一方で、双子の出生率が相対的に上がっているというのだ。
厚生労働省の「人口動態調査」によると、日本の出生総数は193万人(1970年)から約103万人(2013年)と、半数近くまで減少した。だが、双子以上の多胎児の出生数は約2万人と横ばい状態を維持している。1970年代は約1%だった多胎児の出生率が、2013年には1.94%。つまり、40年間で2倍近くになった。
何もこれは、日本だけの現象ではない。たとえばアメリカの双子の出生率は過去30年間で1.76倍に上昇。米・疾病対策センター(CDC)によれば、2012年の出産の3.3%が双子だ。
不妊治療で多くの双子が生まれている?
多胎児が増える背景には、晩婚化による高齢出産と不妊治療の影響がある。たとえば、排卵誘発剤を使用すると一度に多くの卵が卵巣から出て、その結果、双子や多胎になることがある。
また、体外受精の場合、以前は妊娠率を上げるために複数の胚を子宮に戻すことも多く、多胎妊娠の原因となっていた。
2013年のアメリカの医学誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』に掲載された記事でも、2011年までの双子の出産の約36%、三つ子以上の出産の77%が不妊治療を受けた結果だと推定している。
少子化にちょっとでも歯止めを掛けるという意味では、多胎児の誕生は貴重なのかもしれない。その半面、多胎妊娠は母子の出産時のリスクを大きくする。将来の生活習慣病のリスクが増大するといわれる低体重出生や、先天性障害の可能性も高くなる。単純には歓迎できない。
日本産科婦人科学会は多胎妊娠を防ぐため、1996年に子宮に移植する胚の数を3個以内にすることを会告。それ以来、四つ子以上の妊娠は減少した。
さらに、治療技術が向上して移植当たりの妊娠率がアップしてきたため、2008年には原則1個と会告。現在は、35歳以上の患者や、複数回の治療を試みても妊娠に至らない患者に限り、2個の移植ができることになっている。
育児ストレスを軽減! 実際的な支援やケアの整備を
ただ、こうした取り組みで多胎児の数は抑えられても、総数が微減する以上、出生率は上がっていくだろう。双子の出生率の増加にともない、多くの自治体が「多胎児育児支援事業」に取り組むようになった。
たとえば、山形県天童市では、双子以上の子を養育している家庭に対し、ホームヘルパーを派遣して家事・育児を支援する「エンゼルサポート」を実施。ホームヘルパーの費用を自治体が8割負担する。また、保健師による育児・発達の相談を設けたり、母親同士が交流できる会を開催。
多くの自治体が行う、ヘルパーを派遣する「産後支援事業」でも、多胎の場合は利用期間や回数を多めに設定しているところも増えている。
当然だが、双子の子育ては経済的な負担も大きい。交互の夜泣きで休むことができない、外出の際は重く大きなベビーカーを使わざるを得ないなど、苦労も倍だ。
孤独になりがちな育児のストレスを軽減するためにも、多胎児家庭に対する一層の支援やケアの整備が急がれる。
(文=編集部)