体中に張り巡らされた経絡とツボ ISphoto/PIXTA(ピクスタ)
「“ツボ”をはずした質問」といえば的外れな質問、「まんまと思う“ツボ”にはまった」といえば、ドンピシャと計略にひっかかった――。
日本人なら、だれでも知っている「ツボ」。そして、この「ツボ」が、もともとは指圧やお灸をする体の“ポイント”だということも、日本人の多くが知っているだろう。
胃痛や頭痛、腰痛など、それぞれに効果をもたらすツボを押すと、スーッと不調が消えて快適になる。それは数センチずれてもダメで、まさにその一点を刺激すると効く。だからこそ、「ツボをはずす」「ツボにはまる」などの表現は言い得て妙なのだ。
だが、どうして「ツボ」が効くのか? となると首を傾げる人は少なくない。
「鍼灸療法」が有効性を認めWHOがツボを認定
東洋医学によると、ヒトの体内には「経絡(けいらく)」という「気血(エネルギー)」の通り道が張りめぐらされている。それは12本あるとされ、体内を縦横に走る様は、解剖図の血管のようでもある。
経絡はあくまでも気血の通り道である。この経絡上に、サービスエリアのように点在するのが「経穴(けいけつ)」で、これがツボと呼ばれるもの。体表にあるツボを刺激すると、体の奥にある内臓などの状態が改善するのは、経絡でつながっているからだと考えられている。
血管や神経と違い、解剖しても経絡やツボは目に見えない。おまじないや民間療法のたぐいだと思う人もいるかもしれないが、明治時代以降、科学的な解明が進んでいる。
たとえば京都大学理学部からは、皮膚の中には電気が通りやすいポイントがあり、それがツボとほぼ一致するという研究結果。さらに21世紀に入り、WHO(世界保健機関)は、神経痛や頭痛、リウマチ、胃腸炎、めまい、眼精疲労などの症状にツボを刺激する「鍼灸療法」が有効であること認めた。
さらに、アジア各国でまちまちだったツボの位置を361カ所にまとめた。WHOのお墨付きが与えられたわけだ。
最近の研究によると、ツボはおそらく原始時代から知られており、石器などで「ここを押したら、あそこの調子がよくなった」という経験が蓄積されて、古代中国で体系づけられたのだろうという。
もちろん、それ以来の経験も蓄積されており、相当の“ビックデータ”を基にツボは確定されているのである。