トム・クルーズなど障害を克服した有名人は多い Featureflash/Shutterstock.com
公開中の新作映画『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』プロモーションのため、自家用ジェット機で華麗に日本に降り立ったトム・クルーズ。彼が大人になるまで「識字障害(ディスレクシア)」だったことは、よく知られている。
「◯◯障害」と聞くと、多大な困難を想像してしまうが、トム・クルーズのように克服した例や、その詳細を知れば、むやみに怖がることはないことがわかる。むしろ、身近な人のわかりづらい行動の陰には、こうした障害や難病由来の症状なのかもしれないと、認識を新たにできることでもあるだろう。
トム・クルーズ自身は、アルファベットの「b」と「d」の見分けがつかず、読み書きができなかったという。これを克服するまで、母親やアシスタントが台本を読んでそれを聞き、セリフを暗記して映画撮影にのぞんでいた。欧米では1960年代以降、この識字障害の認知が広まり、その出現率はなんと人口の1割程度ともいわれる。
幼少期には本人も周囲ディスレクシアに気づかないも
転じて、日本ではどうだろうか? 昨今「学習障害(Learning Disabilities)」への認知は高まりつつあるが、そのうちのひとつである識字障害については単独の調査結果はなく、研究も進んでいない。
文部科学省が平成24年に約53000人を対象に行った調査では、通常学級に在籍する生徒のうち6.5%程度の割合でLDが存在する、との結果が出ている。だが、この数字は「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「高機能自閉症」など、あらゆるLDをまとめた数字だ。ディスレクシアのみに限ってみれば4.5%程度と言われるものの、厳密な実態はつかめていない。
では、ディスレクシアとはどのようなものなのだろうか。ディスレクシアとは、学習障害のひとつで「読み書きに困難を持つ」ことを指す。肝心なのは、日常会話ではその障害が現れないために、幼少期には本人も周囲もそのことに気づかず、ある程度の読み書きが必要とされる小学校中学年以降に困難さの度合いが高まってくるという点だ。
知的な遅れはなく、なおかつ日常会話や身体能力に問題はない。だから、幼児期の遊びや会話はいたって正常。これが、学校などで文章を読む・書くとなったときに、本人にも不思議なほどに困難さが生じてくる。障害の程度の個人差が大きく、あるいは障害が複合的に入り混じっているという点も、この障害を気づきにくくしている要因だ。