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自閉症家族のバイブル! 『自閉症の僕が跳びはねる理由』でその世界を垣間みる

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 平成26年度(第69回)文化庁芸術祭のテレビ・ドキュメンタリー部門で、昨年8月にNHK教育テレビで放送された『君が僕の息子について教えてくれたこと』が大賞に選ばれた。

 重度の自閉症で他人と会話がスムーズにできない東田直樹さんと、自閉症の息子をもつイギリス人作家デヴィッド・ミッチェルさんの交流を描いたドキュメンタリー作品だ。何度か再放送されたので、番組をご覧になった人も多いだろう。

コミュニケーションができない脳の機能障害

 

 自閉症とは、生まれつきの脳の機能障害により、人とのコミュニケーションが取れない、パターン化した行動を取る、といった特徴が見られる。街中で突然大声を上げて走り出したり、信号待ちの時に体を左右に揺らしたり、見知らぬ人に突拍子もない言葉を投げかけたりすることもある。

 軽度のアスペルガー症候群の人も含めると、自閉症の人は100人に1人の割合でいるといわれる。男性に多く、発生頻度は女性の4倍。その症状は、他人と目を合わせられない、言葉が話せない、返事ができない、手をヒラヒラさせる、理由もなく跳びはねる、パニックを起こすなどがあり、半数以上が知的障害を伴う。落ち着きのなさから、しばしば、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)と誤診されることもあるという。

 5歳の時に自閉症と診断された東田直樹さんも、突然大声を上げたり、手を叩いたりすることがある。人とスムーズに会話することはできないが、キーボードと同じ配列の手書きの文字盤を指差しながら発声し、コミュニケーションをとっている。

 そんな東田さんが「どうして上手く会話できないのですか?」「跳びはねるのはなぜですか?」といった質問に答える形で書いたエッセイが『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール)だ。2007年、彼が中学生の時に出版された。

息子の心をナオキが語ってくれた

 

 日本で8年間、教師として働いた経験のあるイギリス人作家のデヴィッドさんは、突然頭を床に打ち付けたり、パニックになったりする自閉症の息子に日々悩まされ、理解できずにいた。どう愛したらいいか途方に暮れていた頃、通販サイトでこの本に出会い、早速、取り寄せたという。そこには、これまで理解することができなかった息子の行動の答えが書かれていた。

「どうして話せないのかは分かりませんが、僕たちは話さないのではなく、話せなくて困っているのです。自分の力だけではどうしようもないのです」「僕たちは時間の流れにのれず、言葉も通じず、ただひたすらこの体に振り回されているのです」「思い通りにならない体、伝えられない気持ちを抱え、いつも僕らはぎりぎりのところで生きているのです。気が狂いそうになって、苦しくて、苦しくてパニックになることもあります」『自閉症の僕が跳びはねる理由』より

 番組の中で、デヴィッドさんは「ナオキの言葉を借りて息子が話しかけてくれるのを感じた」と話した。以前は苛立つこともあった息子の行動を、今では愛情を持って見守るようになったという。

20カ国以上で出版

 

 この本によって自閉症の息子を理解できるようになったデヴィッドさんは、自閉症の子どもを持つ親に向け、すぐさま翻訳し2013年にイギリスで発行。発売前に異例の6000冊の予約が入ったという。

 デヴィッドさんの思惑通り、この本は自閉症の子どもを持つ世界中の親たちに読まれ、大きな感動を与えている。「自閉症の息子の行動の意味が分かった」など通販サイトのレビューは1000を超えた。アメリカ、カナダ、ノルウェーなど、今や20カ国以上で販売され、10万部を超えるベストセラーとなっている。日本でも22刷を数えるロングセラーだ。

 もちろん、自閉症の家族がいない人でもこの障害を理解するために読む価値は大きい。そして、会話はできないけれど言葉を通して優れた表現力をもつ作家としての東田直樹さんの今後にも期待したい。
(文=編集部)

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