なぜ「木登り」が、それほどワーキングメモリを向上させるのか。これは動的な「固有受容的運動」(関節の位置や関節の動き、変化を感じる運動)が鍵となる。
つまり、自分が木の枝や角材の上を移動すると、状況や地形が次々と移り変わっていく。それに対応するためには、身体の位置や姿勢、運動を素早くイメージしてコントロールしなければならない。
研究者は、「次が予期しにくい状況への対応と、それに要求される身体のコントロールが、ワーキングメモリを増強させるのだろう」と述べている。自分が動きながら、周囲の状況の変化に対応していくことがポイントだ。木登り以外にも平均台や、山道を走る「トレイルランニング」でも同じような効果が得られるという。
ヨガも、固有受容な運動であるという意味では木登りグループと同じだが、木登りが「動的」であるのに対してより「静的」な運動になる。
20~30代をピークとして、年齢とともに衰えていくといわれるワーキングメモリ。だが、こうした身近な運動で鍛え直すことができるなら試してみない手はない。
(文=編集部)