今は、大学のキャリア教育の授業でも、「女性は35歳頃から妊娠しにくくなるから、それも考慮して人生設計を考えましょう」と教えているそうだ。合理的な女子学生が、「仕事も恋愛も行く先がわからないのに人生設計なんて......。元気な卵子を凍結しておけば、子どもが欲しくなったときに便利かも」と考えても不思議ではない。
実際にアメリカ、イギリス、ベルギー、スイス、イタリア、スペインなどでは、病気でもない健康な女性の「卵子凍結」が認められている。20~30代はキャリアアップに邁進し、40歳ぐらいで卵子を解凍して体外受精で妊娠、という人生設計を描く女性が増えているという。
約マイナス190度で卵子を凍結する技術は、急速に進歩しており、解凍してからの受精率はほぼ100%なのだという。
6割の独身女性が「卵子凍結」に肯定的という調査も
日本結婚相談所連盟(IBJ)が、20~30代の未婚女性137人に「卵子凍結サービスが主流になってきたら利用してみたいですか?」と質問したところ、「はい」が19.7%、「どちらかといえば、はい」が40.1%で、6割近くが肯定的だった。
日本生殖学会が2013年、40歳以上は推奨しないなどの条件つきで「卵子凍結」を認める指針を出した。それを受けて、日本でもいくつかの機関が「卵子凍結」サービスを開始している。
たとえば、「リプロサポートメディカルリサーチセンター」(新宿)のwebサイトでは、利用できるのは原則39歳以下で、50歳の誕生日まで保管。費用は採取・凍結に80万円、保管費が卵子1個につき年1万円となっている。
ちなみに、日本産科婦人科学会は2015年6月、基本的に「卵子凍結」を推奨しないと発表した。
ところで、出生率が2を超えるフランスでは、「卵子凍結」は認められていない。それでも、出産可能年齢の女性の8割は働いているという。職場では育児時短が認められ、保育ママ、ベビーシッターなどの保育サービスが多様で、補助金も出る。これらの社会保障は、結婚していない同棲カップルにも認められている。男女とも労働時間が短いので、協力して子育てができる。「子育てしながら働ける」社会の仕組みが整っているのだ。
そんなフランスにも「卵子凍結」を望む女性はいる。多くは30代独身で、隣国ベルギーに出かけて凍結するそうである。
(文=編集部)