6月に心の疲れやストレスが噴出......
近年、「5月病」ならぬ「6月病」が増えている。「5月病」は、春の新生活が始まって1か月が経ち、心の疲れやストレスが、心身の不調となって現れるものだ。正式な病名ではないが、新入学の学生をはじめ、春に生活を心機一転した人によく見られ、その名が定着している。
同じことが、6月に見られると「6月病」だ。「6月病」にかかると、次のような抑うつ状態を感じる。
○気持ちが沈み、やる気が起きない
○不安や焦りを感じる
○イライラする
○体がだるい
○よく眠れない
○ごはんがおいしくない
「6月病」は、とくに会社の新入社員に増えているという。4月の研修期間を終え、5月から新しい部署に配属され、ようやく新生活に慣れるのが6月。そのあたりで、心の疲れやストレスが噴出するという。
疲れやストレスを軽減させるための、規則正しい生活と十分な睡眠は、症状の緩和に役立つだろう。もし、生活にゆとりを持ち、心身ともリフレッシュできたとしたら、それは本当の、一時的な「6月病」だろう。
ただし、専門家は「6月病」を、「適応障害」と見ることがある。つまり、新しい環境に適応できないことが原因だ。「適応障害」とは、ストレスが、情緒面や行動面に、大きな影響を及ぼす病気だ。情緒不安や神経過敏を引き起こしたり、無断欠勤・欠席や暴飲暴食、無謀運転を行ったり、体の緊張が高まってさまざまな不調が現れたりする。
「うつ病」との違いは、会社が休みの日など、ストレスの少ない時は、憂うつ気分がラクになり、好きなことができるようになる点だ。「うつ病」だと、そうはいかない。常にやる気が起こらないし、何も楽しめない。
とにかく「適応障害」の場合、多くの人には何でもない職場などの環境が、ある人にはストレスフルで、とてもつらく、耐えがたく感じられる。ストレスの原因がはっきりしているので、その原因から離れると、症状は次第に改善するはずだ。
深刻な病気に発展する6月病
しかし、ストレスの原因を、そう簡単に断ち切れない事情もある。会社を辞める、生活を変える、こうした決断はたやすくできるものではない。まして、抑うつ症状が出ているときは、判断能力が低下し、大きな決断をしにくくなる。
その場合、ストレスをいかに軽減させるか、がカギとなる。苦手な人には近づかないようにしてみたり、リフレッシュできることを積極的に取り入れてみたりと、できることは何でも試してみるとよい。
また、自分自身のストレス耐性を高める方法もある。認知行動療法などの心理カウンセリングは、そのうちのひとつだ。
早めに手を打たないと、ストレスが続くほど不調も続く。次第に深刻化し、リフレッシュで回復できるレベルではなくなる可能性もある。「適応障害」と診断された人のうち40%以上が、5年後には「うつ病」などに診断名が変わっている(厚生労働省調べ)という事実からも、いわゆる「6月病」を放置してはならない。
「適応障害」の診断から、実は「発達障害」があることがわかった、というケースも少なくない。大人の発達障害の多くは、このように就労後に判明する場合が多い。ある程度、マイペースに生活できた学生時代と違い、職場はストレスでいっぱいの場所なのだ。
さらに「6月病」には、ほかの問題が隠されていることがある。
すっきりしない天気が続く季節とあって、「季節性感情障害(SAD=Seasonal Affective Disorder)」の、抑うつ症状が出ている場合がある。SADは別名「冬季うつ病」とも呼ばれ、たいてい秋から冬にかけて、気分の落ち込みが出る病気だが、梅雨や夏など、別の季節に起こす人もいるのだ。
このように、要因も対応もさまざまな6月病。すぐ治る、と侮らず、正しい診断を受けるようにしよう。
(文=編集部)