男性はひとりで悩みを抱え込みがち wavebreakmedia/PIXTA(ピクスタ)
連休が明け、普段の日常が始まる。出勤するのを憂鬱に感じ、いわゆる「五月病」に陥る人もいるかもしれない。
「五月病」は、たいてい一時的な抑うつ気分で、病気には当たらないとされる。しかし、症状が継続する場合は注意が必要だ。うつ病などの精神疾患がひそんでいる可能性を示す、メンタルヘルスにおける心のサインだからである。
うつ病の有病率は、女性のほうが男性の約2倍高く、女性に多い病気であることは国際的に認識されている。女性特有の病態についても詳しい、福島県立医科大学付属病院の性差医療センターでは、男女比の割合が女性に傾いている病気として専門的に扱っている。
女性のほうがうつ病にかかりやすい背景には、月経、妊娠・出産など女性ホルモンが変化するライフイベントを抱えていることや、症状を周囲に訴えやすく医療機関に助けを求めやすい傾向などが挙げられる。
一方で、男性の自殺率の高さは見過ごせない。内閣府の調べによると、平成26年の自殺者数は女性8041人に対し、男性は1万7386人と倍以上の開きがある。
もちろん、自殺者の全てがうつ病患者ではないが、死にたいと思う気持ちを抱える「希死念慮」はうつ病の大きな特徴だ。厚生労働省の自殺対策の中核が「うつ病対策」であることからも、自殺とうつ病の関係は深い。
まだ、男女でうつ病の症状に明確な違いがあるという、医学的なエビデンスは存在しない。だが、女性よりも男性のほうが、うつ病から自殺に至るケースが多いことは、これらのデータからうかがえる。
会社に行きたくないオトコたちとは?
精神科専門医の権威ある学会「英国王立精神科医学会(Royal College of Psychiatrists)」は、男性のうつについて次のように言及している。
まず、男性のうつ病の特徴は、「イライラする」「怒りがこみあげる」「だんだん歯止めがきかなくなる」「無謀なことをする」「攻撃的になる」といった「易怒性」の症状が挙げられる。
意外だが、性行為をまったくせず、インポテンツになる人がいる一方で、うつ病によって性的衝動や性交の回数が増えた人がいるという事実も指摘している。そして、女性よりも自殺に至る傾向が高い、とも述べている。
同学会によると、男性のストレス主な原因は、人間関係や家庭生活よりも仕事だという。そして、男性のほうが自分の脆さを認めたがらず、周囲や医療機関に相談しようとせず「自力でなんとか解決しなくては......」と考えるというのだ。
そのため、飲酒や喫煙、薬に頼りがちになる。最悪の結果、ひとりで解決しようと自殺という道を選ぶのだ。
「五月病」で出社したくないと感じた場合、症状が進む前に、次のことを実践してみよう。英国王立精神科医学会が、自分でできる取り組みを挙げている。
・酒や薬物は、うつ病を悪化させるので、避ける。
・散歩でもいいので運動する。
・野菜や果物を多くとり、バランスのよい食事を心がける。
・楽しめることを、毎週ひとつ行う。
・休暇をとる。
・うつ病について書かれたものを読む。
できれば、さらに次の3点も早めに実践してもらいたい。特に専門家と交流を図ることは、ものの見方を変えられる大きなチャンスとなって気分が楽になりやすい。
・自身の気持ちを誰かに打ち明ける。
・地域の相談室や電話相談に相談する。
・専門医に相談する。
とにかく周囲の助けを得ることが、この病気においてとても大切だ。
(文=編集部)