究極の"自家発電"は"自己発電"だった!? 腕時計やスマホの充電池など実用化も進む

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Vodafoneが開発した「Power Pocket」。「ショートパンツ」タイプのものは1日で約4時間程度の充電が可能だ(同社のHPより

 人間は恒温動物だ。36.5℃~37.0℃が平熱といわれ、生きている限り、発熱をやめることはない。言い換えれば、人間は常に熱エネルギーを発生させているのだ。

 石油や石炭、天然ガスなどの化石エネルギー、風力や太陽光などの自然エネルギー、そして原子力......。資源に乏しい日本では、これまでも、そしてこれからも、エネルギー問題と向い合っていかなければならない。

 しかし、もし人間の体温がエネルギー源になるのだとしたら......。

 人間が熱を発しているのは「新陳代謝」を行っているからだ。新陳代謝とは、体内で起こる化学反応のことで、食べ物からの栄養を分解して人体の組織を作ったり、内臓や筋肉を動かしたりするエネルギーを利用することをいう。体温とは、直接、運動に使われなかったエネルギーが変換されたもので、人間の場合は実に全体の約75%が体温の維持に使われている。

 とはいえ、それほど高温とはいえない人間の体温が、実用化レベルのエネルギーになるのか? そのキーワードとなるのは「ゼーベック効果」だ。

すでに腕時計で実用化されていた!

 ゼーベック効果とは、1821年エストニアの物理学者、トーマス・ゼーベックが発見した熱電効果の一種だ。2種類の物質の両端に温度差を与えると、その両端間に電圧が発生して電流が流れることをいう。

 このゼーベック効果を利用し、実際に商品として発売された腕時計がある。1998年、セイコーが限定販売した「THERMIC(サーミック)」は、世界初の熱発電時計。1999年のグッドデザイン賞も受賞している。また1999年にシチズンも、「エコ・ドライブ サーモ」の商品名で同機能の腕時計を発売している。

 両社がそれぞれが研究・開発したのは、腕時計の装着者の体温と外気温との差で電圧を確保する熱電装置だ。当時、シチズンの開発部が発表した論文では、この熱電装置の平均的な発電電力は毎時約12マイクロワットで、腕時計を動かすに足る電圧が約1マイクロワットであることを考えると、体温の個人差を考えても十分なエネルギーが得られる、としている。また、消費電力以上のエネルギーを2次電源に充電することで、非携帯時も常時駆動可能になったという。やはり、人間の体温はエネルギーとなりえるのだ。

体温でスマホを充電できる日が来る?

 体温による発電装置と聞いて最もニーズが高そうなのは、やはり携帯電話やスマホなどモバイル端末の充電だろう。総務省が発表している「平成25年度版 情報通信白書」によれば、平成24年度末の携帯電話・PHSの世帯普及率は94.5%にもなる。事実、世界では、以下のような実験や開発が進んでいる。

 2013年6月、イギリスのワイト島で開催されたイベントで、携帯会社Vodafoneによる体温発電の試験運用が行われた。「Power Pocket」というこのツールは、「寝袋」タイプを8時間使用すると携帯電話の待機モードで8時間、通話モード24分までの充電が可能だ。同様に、「ショートパンツ」タイプのものは、1日歩いたり踊ったりすれば4時間程度の充電ができるという。

 また、韓国科学技術院(KAIST) の研究グループが2014年発表した発電装置「ウェアラブル発電素子」は、グラスファイバー製で非常に小さく軽量で、折り曲げることもできるため、時計のベルト部分などに挿入もできる。50×100センチメートルの上着サイズで作れば毎時約2ワットの電力が発生し、携帯電話への充電も十分に可能だ。この発電素子の商品化は、2~3年後になるだろうといわれている。

 身の回りにあるわずかなエネルギー(エナジー)を採取(ハーベスティング)し電力を得る技術を「エナジーハーベスト(環境発電)」という。すでに一般に普及している太陽光発電などに加えて、人間がエコなエネルギーの素材として活用される日も、そう遠くないようだ。
(文=編集部)

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