"アルコールハラスメント"は殺人罪!? 飲めても飲めなくても危ない急性アルコール中毒!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ちなみに「イッキ! イッキ!」は1985年の流行語大賞になっており、1980年代から30年余りの悪しき伝統。日本には「飲みニケーション」という、酒席で付き合いを深めるという習慣があった。家族との時間を犠牲にする、飲めない人がいたたまれない......などから、次第に薄れつつあるが、いまだに「大人の男は飲まなければコミュニケーションを取れない」と考えている人たちも少なくない。

 しかし、この「飲むのが当然。飲まない奴は空気が読めない、場を白けさせる奴」という考えが危ない。これが飲むことを断れない空気を作り、悲劇を招く。「一気飲みして、つぶれるまで飲むのが部の伝統。」などと、飲みつぶれることを前提に後輩に飲ませれば傷害罪。相手が死ねば傷害致死罪。その場にいて「イッキ」コールに参加すれば傷害現場助成罪。酔っぱらった者を適切に介護、救急車を呼ぶなどせずに、死なせてしまったら保護責任者遺棄致死罪。

「飲めないなら、本人が断ればいい。鼻をつまんで口に注ぎ込むわけじゃない。本人が飲んでいるんだから」

 飲み始めてから酔いを感じるまでは30分ていどかかる。つまり泥酔状態に陥るほど大量のアルコールを摂取した危険な状態でも「まだ飲める」と思ってしまう。そもそも「酔う」とは脳が麻痺した状態。つまり冷静な判断ができない。少し飲んで酔って頭が働かなくなっているところに、大量に飲んで、飲んだ分の酔いが回ってない段階で、さらに「飲める」と思って飲んでしまうから、脳が麻痺する危険な昏睡状態に陥る。

 昏睡状態まで行かなくても、酔いが進んだ状態で吐くことが危険。急性アルコール中毒による死亡の多くは、吐しゃ物による窒息死だ。足元がふらついて転倒しただけでも、死を招く危険がある。高いところから落ちたりしなくても、ただ立った姿勢から受け身せずに倒れただけでも、脳挫傷を起こす。

 さらに、最近、海外では死亡者続出のネックノミネート(Neknominate)と呼ばれる危険なネット投稿型一気飲みも起こっている。大量に一気飲みした自分の動画を投稿して、次の挑戦者を指名するゲームだ。これにより多くの死亡者が出ている。

急性アルコール中毒で死なせないためにすべきこと

 

 一気飲みは常に危険を伴う。おもしろい遊びなどと考えてはいけない。「イッキ」コールは殺人行為と心得たほうがいい。吐かせればアルコール濃度が薄まるなどと思っている人がいて、吐かせては飲ませるという危険な行為をする。しかし胃腸にある分を吐かせても、既に体に吸収された分は出せない。それ以上に、無理やり吐かせると、誤嚥(ごえん。飲食物などが肺などに入ってしまうこと)や窒息などを起こすので、非常に危険な行為。吐かせるときは横向きで、本人が自然に吐くのに任せるべきだ。

 酔っぱらった人からは目を離してはいけない。従って、酔いつぶれた人をどこかの部屋にまとめて置いて、見張りを一人つけるなどというのではダメ。その一人が眠ってしまったり、トイレに行ったりしている間に何が起こるかわからない。たまに見回るていどでは絶対にダメ。その間に死んでしまう。「頭を冷やす」などと外に出て、外で眠って凍死したり、池に落ちたり......といった危険もある。

 酔いつぶれた場合には、仰向けに寝かせてはいけない。吐いて喉に詰まらせる危険が高い。横向きに寝かせること。そして、そばに付き添い、よく観察することが必要。「息苦しそう」「全身が冷たい」「大きないびきをかく」「ゆさぶっても、反応しない」などの危険信号が見えたら、ためらわずにすぐ救急車を呼ぶべきだ。いつ危険な状態に陥るかわからないので、目を覚ますまで、必ず二人以上で付き添って見守らなければならない。

 こういった適切な処置をせずに死なせた場合、保護責任者遺棄致死罪で訴えられる。ここまで知ると、「イッキ飲み」「つぶれるまで飲ます」なんて面倒なことをしたくないと思うのでは?
(文=編集部)

バナー1b.jpeg
HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

毎年世界中で3億7000万人超の感染者があると言われる性感染症。しかも増加の傾向にある。性感染症専門のクリニックとしてその予防、検査、治療に取り組む内田千秋院長にお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市…

内田千秋

(医)スターセルアライアンス スタークリニック …

竹島昌栄

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会…

後藤典子