インタビュー がん治療は第一選択がその後の人生を変える! 第1回 市民のためのがん治療の会代表 會田昭一郎さん

舌がんステージ3から舌の切除を免れた…セカンドオピニオンの重要性

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セカンドオピニオンで舌切除を免れた...... 最適な治療選択の重要性とは?の画像1

放射性物質を密封した"針"を埋め込んだ治療で完治

 国民生活センターに勤めていた會田昭一郎さんは、消費者問題を長年研究してきた。2000年に舌がんの告知を受けた會田さんは、治療のために最善の努力をしようと決意。最適の治療を求めた結果、小線源による放射線治療の名手によって舌の切除を免れ、あらためて最適な治療の選択の重要性に気がついたという。

 その経験を生かし、「がん治療における消費生活センター」をイメージした「市民のためのがん治療の会」を2004年に設立。セカンドオピニオンの斡旋や、がん治療に関する普及啓発活動、医療環境整備の政策提言などを行っている。

たまたま診てもらった病院、担当医で本当にいいのか?

 III期の扁平上皮がんから生還した會田さんの体験談は、セカンドオピニオン(第二の意見)の重要性を痛感させられるものだ。

 「最初は、舌の裏に1cmに満たない変色部位ができました。近所の総合病院で白板症と診断されて経過観察することになったのですが、働き盛りだったので、自覚症状がないのをいいことに放っていました。2000年2月、今まで表面はなめらかだった500円玉大の白い部分は、あっという間に病変部位がデコボコしたクレーター状になって口腔底にまで広がり、III期の扁平上皮がんと診断されました」

 「最初の診断では、化学療法と放射線治療による3カ月の治療。がんを治すために最善の努力をしようとは思いましたが、検査を受けた自宅近くの総合病院にそのまま入院を決意しました。遠方では、身の周りの世話に訪れる妻の負担が重くなるからです。担当医の意見に従い、入院手続きをすませました」

 ところが、がん体験がある元上司に相談すると、「本当に今の病院、担当医でいいのか?」と念を押され、あらためて最適な治療を選択する重要性に気づいたという。

 「たまたま診てもらったのが耳鼻咽喉科で、がん治療のために選んだ病院ではない、そして主治医は舌がん治療の専門家であるかどうかも分らない......。当時は医療情報も乏しくネット上の情報も粗末なものでしたが、入院までの1週間でベストの治療を探し出そうと悪戦苦闘しました」

 国内外の情報を収集して調べた結果、放射性物質を密封した小線源を患部に入れて内部から放射線を当てる治療法があることを知る。

 「地域を限定せずにセカンドオピニオン(第二の意見)を求めました。旅費を払っても合理的な治療を行えば安くなると考えたからです。その結果、当時、国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科の医長だった西尾正道先生(現・北海道がんセンター名誉院長)がその名手と知りました。直接電話をすると、西尾先生は『来られるなら診ましょう』と即答。すぐに札幌へ向かいました」

治療は生死のスレスレのところで行われている

 治療は、舌や口腔底にできた患部を炭酸ガスレーザーメスでそぎ落とし、舌に小線源を刺入。術後3週間で職場復帰を遂げた。その後も再発・転移はなく、高いQOL(生活の質)を維持している。

 「治療法を意思決定する過程で、放射線治療の可能性が提示されるだけでいいんです。私の場合は"ことば"を失わずに済みました。どの治療法にもメリット・デメリットがある。治療はいつも生と死のスレスレのところで行われている。患者もそこを十分理解すべきだと、つくづく思います。今やがん治療は、高いQOLを維持しながらの社会復帰を目指す時代。患者が納得のいくがん治療を受ける一助となれば幸いです」
(取材・文=編集部)

●市民のためのがん治療の会 http://www.com-info.org/
●一般社団法人 市民のためのがんペプチドワクチンの会 http://www.ccpvc.org/

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會田昭一郎(あいだ・しょういちろう)

市民のためのがん治療の会代表。舌がん治療による体験から最適な治療の選択の重要性に気がつき、2004年、「市民のためのがん治療の会」を設立。セカンドオピニオンの斡旋や、がん治療に関する普及啓発活動、医療環境整備の政策提言などを行っている。2012年、標準治療に行き詰まった患者のために「一般社団法人市民のためのがんペプチドワクチンの会」も設立。がんペプチドワクチン療法の啓蒙活動・情報発信、研究支援のための寄付活動などを行っている。

市民のためのがん治療の会 http://www.com-info.org/
一般社団法人 市民のためのがんペプチドワクチンの会 http://www.ccpvc.org/

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