20年目の東京地下鉄サリン事件~取り残されたままの医療的な課題とは?

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5、東京地下鉄サリン事件被害者への長期的影響への調査
 地下鉄サリン事件被害者への長期的影響に関する調査は残念ながら行われていない。特に中枢神経系への長期的影響を明らかにすることは国際的責務であろう。海外の研究者からは、2007年のAnn Neurol (61:37-46)に発表された山末氏らの研究「サリン急性単一曝露に関連したヒト脳の構造変化」に対する大きな関心を呼んでいるが、その後の調査も無い。この研究は、地下鉄サリン事件の後遺症が、被害者に共通する、脳の島皮質や海馬の体積の減少によるものである可能性を示したものだ。

 奥村氏は「国際的に見て、有機リン中毒の症例は多いが、有機リン中毒とサリンのような神経剤の臨床像が一致するのかなどさまざまな検討課題がある。人に神経剤を暴露させる研究など倫理的に不可能である。したがって過去の痛ましい被害者の知見が埋もれることなく今後に生かしていくべきだ」とする。

「国内での非常事態への体制整備もさることながら、痛ましい化学テロが引き起こされ、被害者はその後どうなっているのかを日本は世界に発信・報告する義務がある。そうした追跡調査が無いと海外の研究者に話すと必ず絶句されてしまう。亡くなられた13名の方に対し、20年たった現在は、その尊い犠牲の上にこうやって進歩しましたと墓前に報告できるのか。私たちは今あらためて問われているのではないか」と語る奥村氏。

※第29回日本中毒学界東日本地方会(1月10日)、第20回日本集団災害医学会総会・学術集会(2月26日)での講演より。
(文=編集部)

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