痛みはどうして起こるのか? コントロールできる痛みの仕組み

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耐えられない痛みがさらにストレスを招くshutterstock.com

 世の中にはどれくらいの種類の痛みが存在するのだろうか? 痛みは医学的には「疼痛(とうつう)」と呼ばれ、「疼痛管理」として専門領域も登場しているほど私たちの「QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)」と密接に関係している。

 同じ頭痛といっても「ズキズキ」「キーン」「ズンズン」などいろいろの種類がある。腹痛でも「シクシク」「ズーン」「キリキリ」などさまざまな表現で患者は医師に訴えるのと同様だ。梅雨の時期の腰痛や、虫歯の痛み、がん末期の耐えがたい痛みなど、私たちが経験するこれらの痛みは、どのようにして起こるのだろうか?

 痛覚(痛みを感じる感覚)は神経の終末(末端)が刺激されて起こる----と書くと非常に単純な話だが、そのミクロ世界の構造研究は進んでいる。細胞が何らかの刺激や損傷を受けると、その細胞からはセロトニンやアセチルコリンのような「発痛物質」が分泌される。その物質が神経の末端に届き、神経を刺激して電気信号となって脊髄から間脳の一部を占める視床を通り、大脳の体性感覚野や島皮質(とうひしつ)、頭頂野連合、前帯状回などに到達し、どこからの信号かを瞬時に分析、「左足の中指に痛み発生!」と感じるのである。

 つまり痛みを感じるのは脳なので、この痛み信号が通過する神経末端→脊髄→視床、そして大脳の体性感覚野などに障害がある人では、痛みを感じることができないケースも生じるということである。

 仮に痛みを感じなければ、どうなるだろうか? 当然、身体に起こる異常を感じることができず、外部の危険から身体を守ることができない。発熱やせきなどと同じように、痛みも大切な反応(バイタルサイン)ということができるだろう。

 救急隊の隊員も現場に駆けつけた際には、「痛みはありますか?」と必ず傷病者に質問する。これは意識レベルの確認と共に痛覚が正常に働いているかを確認しているのである。

鋭い痛みは秒速30m、鈍い痛みは秒速2m

 痛みは先ほど記したように、さまざまな表現ができるが、大きく分けると鋭い痛み(「チクッ」「キリキリ」)と、鈍い痛み(「ズキズキ」「ズーン」)と分けられ、それぞれ「ファーストペイン」「セカンドペイン」と呼ばれている。これは脳への伝達の神経経路が違うために起こる現象といわれている。現在の研究では、鋭い痛みは秒速約30m、鈍い痛みは秒速約2mといわれ、慢性痛などもこの鈍い痛みとつながっている。

 急性の痛みは、基本的にケガの手当など原因を解決すれば消えるものだが、なかには頭痛や腰痛、神経痛など厄介な慢性的な痛みを訴えるケースも少なくない。そのような生活全般にわたって影響を及ぼす慢性痛に対して、厚生労働省も平成21年から検討会を設けて、専門家の意見の集約を行っている。また、診療領域をまたいで痛みを専門に診る病院やクリニックも増えている。

痛みを専門とする「ペインクリニック」

 医療において痛みをなくすと言えば麻酔科の領域となり、1962年、東京大学病院にペインクリニック科の外来が新設された。現在、街で開業しているペインクリニックも主に麻酔科を標榜している医師によって開かれているところが多い。

 原因不明の痛みについては通常の診断と同様、CTやMRIなどを使ったさまざまな検査から入り、原因疾患の特定が行われる。それと同時に痛みを極力抑える鎮痛・緩和のための治療が開始される。痛みの緩和のための治療は原因疾患により、薬剤療法、神経ブロック療法、理学療法、認知行動療法などが単独、もしくは組み合わせて採用される。

 薬物療法では、アスピリンに代表されるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、風邪薬などにも用いられるアセトアミノフェン、内臓痛にはブスコパンに代表される鎮痙薬(ちんけいやく)が用いられる。また手術やがん性の強い痛みに対しては、麻薬性の鎮痛薬である塩酸モルヒネなども使われることがある。

 神経ブロック療法は、その名の通り痛みを伝える交換神経の末端やその周辺に麻酔薬を注射する方法で、他の療法よりも比較的早く痛みの緩和を図ることができる。この注射により痛み周辺の血管も拡張するため血流も増え、溜まっている乳酸などを流す効果もある。副作用としては、注射後のしびれが挙げられている。治療後は30分から1時間程度の安静が必要だ。

 頭痛、腹痛、腰や背中の痛みなど慢性的な痛みを我慢して放置していては、家庭生活や仕事にも大きく影響する。近くのペインクリニックを受診して、相談してみるのもひとつの解決法になるだろう。
(文=編集部)

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