新型コロナ PCR検査をクラスター追跡と重症者のみに固執する厚労省(続)

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PCR検査検査体制は全く春から変わっていない!

 前回の記事では、症状がありながら保健所のPCR検査が受けられなかった警察官の例をご紹介したが、そこで問題があると感じられた点を整理すると、警察官のような公共性の高い仕事に従事している人でも特別な検査ルートがあるわけではなくて一般市民と同じ基準で検査の是非が決められていること、症状がある方で医師が検査の必要性を認めて依頼しても保健所ルートの検査は約束されたものではないことなどであった。

1.PCR需要の内容による分類とそれぞれの対応

新型コロナPCR検査の対象者を一律の基準で選別しているためにこのような不都合なことが起きているものと思われる。PCR検査の需要ごとに整理・分類をして、それぞれの需要に見合った対応をとるべきではないか。主なものを列挙すると、

1)公衆衛生:クラスター追跡(濃厚接触者)、空港の防疫(行政検査)
2)医療:症状のある患者さんの診断・治療(医療保険)
3)院内感染・高齢者施設内感染等の防止:施設従事者の監視的意味合いの検査(公費負担)
4)警察・消防・学校・保育園などのエッセンシャルワーカーの監視的意味合いの検査(公費負担)
5)渡航予定者:諸外国への入国条件を満たすための検査(いわゆる陰性証明書)(自己負担)
6)プロスポーツ選手・関取り、演劇や音楽家などのスクリーニング検査:(自己負担)
7)会社、旅行者:日々の通勤・勤務、旅行前の安心のための検査(自己負担)

 これだけの需要をすべて満たすためには、やはり1日少なくとも10万件から100万件の検査供給体制を整える必要がある。前記事にも書いた通り、特に公衆衛生と医療は切り離して考えるべきであり、同じ基準で対象者を選別しているために混乱を招いている。医療の現場では症状のある患者さんには速やかに検査が行えるようにすべきだし、公衆衛生の面においても高齢者と接触する機会の多い職種や公共性のある仕事に従事する方々に対しては監視的な意味合いでの定期PCR検査を反復して行う必要がある。

 感染拡大防止は何のために行っているのか、その目的がいつの間にか曖昧になり、感染拡大防止自体が目的になりつつある。コロナ感染のために命を落とす人をいかに少なくするかということが本来の目的であったはずで、世界のこれまでの情勢を見ると、亡くなる方の大多数が院内感染や施設内感染で起きている(つい最近の東京都の発表でも、これまで亡くなられた方の51.7%が病院など施設内感染だったと報告された)。このことを考えると、実は(3)の院内感染・高齢者施設内感染等の防止のための施策が最も重要なはずである。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言(7月16日)では、一人でも感染が確認された場合は濃厚接触者以外でも行政検査の対象とするとされているが、そのような方針では到底間に合わない。これらの施設従事者の監視的意味合いの検査は定期的に反復して実施し続けなければならない。日本の公衆衛生学的視点からの対策で最も欠落しているのはこの部分である。

 付記:この記事の投稿中に、大変参考になるネット記事が投稿されましたので、是非ご参照ください。
「はびこる「PCR検査拡大は不合理」説を公衆衛生の第一人者が論破!【偽陽性の問題はほぼ100%ない】 PCR検査の徹底的拡大こそ「経済を回す」」 WHO事務局長の上級顧問 渋谷健司キングス・カレッジ教授
(https://bunshun.jp/articles/-/39414)

2.PCR検査の供給体制の現況

 ところで肝心のPCR検査の供給体制はどうなっているのだろうか?
東京都のホームページには検査実施施設として以下のものが挙げられている。
(東京都の「都内の最新感染動向」サイトの「モニタリング項目」 →「モニタリング項目(4)」→(注)参照)。
(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)

(1)東京都健康安全研究センター
(2)PCRセンター(地域外来・検査センター)
(3)医療機関での保険適用検査。

 このうち(1)は都道府県に所属する地方衛生研と呼ばれる検査施設で、東京都の場合は健康安全研究センターという呼称で呼ばれているものであり、いわゆる保健所ルートの主たるPCR検査施設である。コロナの感染当初、この検査施設のキャパシティーがすぐに満杯になってしまって検査難民が続出したため、都内の各区と区医師会が共同して草の根運動的に急場をしのぐために設立したのがPCRセンターである。残念ながらいわゆる保健所ルートの健康安全研究センターでの検査割合は最近になってもわずかに増えているだけで、大半を医療機関等が行った検査に依存していることがわかる。
(東京都の「都内の最新感染動向」サイトの「その他 参考指標」 →「検査実施件数」参照)。
(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)
 PCRセンターで取られた検査はどこで処理をしているかというと多くは民間の検査会社に依頼している。したがって東京都の検査枠が増えているのは民間の検査会社における検査枠(すなわち保健所の許可なく行える検査、医師の判断によって行われている検査)が増えているためである。

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