腸内細菌の酵素で血液型「A型とB型」を「O型」に変えることに成功!輸血用血液製剤不足の解消へ

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血液型の「A型とB型」を「O型」に変えることに成功(depositphotos.com)

 8月19~23日にわたってボストンで開かれた米国化学会(ACS)の席上、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)生化学のStephen Withers教授の研究チームは、「ヒトの腸内細菌に存在する酵素を活用し、A型とB型の血液をO型に変換する実験に成功した」とする研究成果を発表した。

 O型は、A型とB型の人に献血できるユニバーサルな血液型だ。今回同定した腸内細菌の酵素は、従来の約30倍のスピードでO型に変えられるため、この遺伝子解析技術を実用化できれば、輸血用製剤の供給量を増やすことが可能になる。

輸血用血液製剤の不足が解消できる!

 新技術の要は「赤血球の表面に結合している糖鎖」にある――。

 Withers氏によれば、O型の糖鎖は基本型(H抗原)とフコースと呼ばれる糖だけが結合している。一方、A型とB型はO型と同じ糖鎖の末端に特有の糖(抗原)が結合し、AB型はA型とB型の両方の糖(抗原)が結合している。

 つまり、A型、B型、AB型の人の血液は、A型、B型、AB型の糖に対する抗体があるため、A型、B型、AB型以外の血液を輸血すれば、免疫反応が起きるが、O型なら免疫反応は起きない。したがって、A型、B型、AB型の血液の糖鎖の末端にある糖(抗原)を取り除けば、O型の血液に変えられるので、より多くの人に輸血できる。

 赤血球の表面にある糖鎖を除去するために酵素を用いる研究は、Withers氏らの研究の他、1982年にB型をO型に変換した研究報告がある。だが、この研究に使われた酵素は、O型に変えるのに時間がかかり、非効率だった。Withers氏らは、血液型をA型かB型かを決める糖と類似した腸内細菌が産出する酵素に着目、A型の糖を特異的に除去する酵素を発見した。

 Withers氏は「A型の糖だけを取り除く特異度の高さは、極めて重要だ。赤血球に適応する血液型以外の変化を与えると、輸血された人の免疫反応を誘発する可能性がある。課題は、最も効率的に糖を除去できる酵素を作り出すことだ」と説明する。

 米国赤十字社のチーフメディカルオフィサーのPampee Young氏は「革新的かつ興味深いアプローチだ。この新たな遺伝子解析技術の実用化が進めば、輸血用血液製剤の不足がかなり解消できるだろう」と期待を込めている。

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