スタバも禁止へ! レジ袋・ストロー・カトラリー……プラゴミが世界の海を殺す日

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「マイクロプラスチック」が生態系に入り込む

 

 アメリカの海岸では、命を落とした71%の鳥、30%のウミガメの胃の中からストローが発見されている。

 今年2月には、スペイン南東部の地中海岸に打ち上げられて死んだ体長約10mのマッコウクジラの胃と腸から、29㎏ものゴミが見つかった。

 取り出されたゴミの多くがビニール袋やペットボトルなどのプラスチック類であり、それらを排泄できなかったために餓死したと見られる。その若い雄クジラは、体長から推定される体重の3分の1程度に痩せ細っていたという。

 そうした海洋プラゴミの中でも、いま特に問題視されているのは、5㎜以下に細かく砕かれたプラスチック片からなる「マイクロプラスチック」と呼ばれるゴミだ。これはスクラブ洗顔料や歯磨きに含まれる「マイクロビーズ」と同様に、分解されることなく海中を浮遊する。

 これらの破片を、魚や鳥、大型動物が餌と間違えて飲み込み、体内に蓄積している例は、世界中で報告されている。ごく微小な破片を、多くの生き物の餌になるプランクトンが、直接、体内に取り込んだという例もある。

 陸地から離れた大西洋の深さ300〜600mの深海魚の体内にも、マイクロプラスチックが蓄積していることを、アイルランド国立大の研究グループが突き止めている。検出率は全体の70%超と高く、調査した7種全てから見つかったという。

汚染物質を吸着して魚に蓄積する恐れ

 

 そういう海で獲れる魚を、いま私たちは食べている。

 海の生物に蓄積されたプラスチックが食物連鎖に取り込まれ、ヒトの健康に悪影響を及ぼすことがあるのだろうか? 結論から言えば、海洋プラゴミの人間への直接的な影響は、詳細にはわかっていない。しかし、それを示唆するいくつかの研究はある。

 ひとつはプラスチックの添加物として使用される、内分泌攪乱物質の人体に対する影響だ。ビスフェノールAは人間の腎臓、肺、脳の損傷と関係しているといわれる。フタル酸エステル類も、男性の生殖機能を低下させることに関係する可能性が示唆されている。

 さらに、マイクロプラスチックは、環境中のPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有機汚染物質を吸着しやすい性質がある。誤飲されたマイクロプラスチックから汚染物質が溶け出し、海洋生物の脂肪に蓄積することもわかってきた。

 しかし、マイクロプラスチックが生態系やヒトの健康に対して有害であるという決定的な証拠は、まだ見出せていない。調査が非常に困難だからだ。

 たとえば科学的な調査において、何らかの健康への影響を測定するためには「対照群(その影響に曝露していない人たち)」が必要となる。しかし、プラスチックの場合、現時点で汚染に曝されていない人たちを見つけることは不可能と言っていい。

 それでもマイクロプラスチックは、一度でも海に放たれてしまえば回収は困難であることから、世界の科学者は未知数の危険性に警鐘を鳴らしてきた。今回、国際社会は、そうした予防原則の立場から行動を始めたのだ。

私たちの生活が直接関与している

 

 翻って我が国はどうかというと、完全な出遅れ感が否めない。

 じつは、プラスチックゴミの総排出量が世界で最も多いのは中国だが、1人当たりの排出量は日本が米国に次いで多い。2016年の発生量は899万トンで、リサイクル率は84%と高水準に思えるが、その内訳は「熱利用」と途上国への「輸出」に8割以上を頼っている。

 熱利用は処分場が少なくて済むため、大量消費を抑制する動きにはなりにくい。その結果、不用意に捨てられて、海に流れ込むプラゴミの量も増える一方だ。加えて、プラゴミ最大の輸出先だった中国が昨年、輸入禁止を発表したため、その対応策も急がれる。

 しかし日本には、未だに使い捨てプラスチックを国として規制する仕組みがない。今年6月、2030年までに全プラスチックをリサイクルするか代替可能なものに切り替えることを目指す「海洋プラスチック憲章」がカナダのG7サミットで採択された。しかし、日本はアメリカとともに署名を見送っている。

 政府の対応も情けないものだが、この問題に関してはひとりひとりができることも多い。海に溢れかえる全ゴミの約7割が、カトラリー(ナイフ、フォーク、スプーンなど)、ストロー、綿棒、皿、マドラー、レジ袋など、生活にごく身近なものばかりだからだ。

 アイルランド、イスラエル、カリブ海諸国などでは、レジ袋の規制によって海岸漂着ゴミが明らかに減った。各家庭の省エネが微々たる貢献にしかならない電力問題に比べると、マイバッグやマイボトルを持ち歩く習慣は、海の浄化に直接的な効果をもたらす。

 世界の海が、あのクジラのように痩せ細った生き物で溢れかえる――。そんな悪夢が現実となる前に、今すぐ行動を始めるべきではないだろうか。
(文=編集部)

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