重度障害者が社会で生きる!映画『ブレス しあわせの呼吸』はノーマライゼーションの物語

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映画『ブレス しあわせの呼吸』は実際の出来事を描いたノーマライゼーションの物語(画像は公式サイトより)

 障害のある人が施設を出て地域で暮らす――。いまでは当たり前のことになっているが、それを最初に成し遂げた先駆者には、想像を絶する苦労があったはず。

 9月7日に公開される映画『ブレス しあわせの呼吸』は、勇気あるチャレンジに挑んだある夫婦の、人生を賭けた冒険の物語だ。

ポリオのため施設のベッドで暮らす日々

 大勢の男からの求婚を断り、知合ったばかりのロビンと結婚したダイアナ。ふたりは結婚後の1958年、茶葉の買い付けのためにナイロビを訪れる。やがてダイアナは妊娠。幸福の絶頂にあったふたりだが、ロビンを突然ポリオという病が襲う。

 首から下は麻痺し、自力で呼吸もできないため、気管を切開し、喉から人工呼吸器をつながれる。

 イギリスに帰国したロビンは、施設のベッドの上だけで暮らす日々に「ここから出たい」と訴える。ダイアナはその思いを叶えるため、新しい家を買い、施設の外でも生きられる方法を模索しはじめる。

 ロビンが罹ったポリオという病は、急性灰白髄炎ともいい、ポリオウイルスによって発症するウイルス感染症である。現在、日本では新たな患者は出ていないが、1960年には患者数が5000人を超えるなど猖獗(しょうけつ)を極めた。

 ヨーロッパでは1950年代に大流行し、全身が麻痺した患者は、ベッドの上で人工呼吸器につながれるしか生き続ける方法がないとされていた。

「あなたに私を拘束する権利はない」

 「夫を家に連れて帰る」と決断したダイアナは、主治医に「どんでもない。施設を出たら2週間で死んでしまうでしょう」と止められる。だが、ロビンは「あなたに私を拘束する権利はない」と言い放ち、車に乗って新居へと向かう。

 倒れてから初めて自分の目で青空を見たロビンの、嬉しそうな表情が眩しい。やがてロビンは、友人で発明家のテディに人工呼吸器を取り付けた車椅子を開発してもらい、自由に外へと出かけるようになる。

 一時は「死なせてくれ」と訴えるほど絶望していたロビンが、妻のダイアナの支えによって自ら生きる道を選び取っていくことで、希望を取り戻していく。

 ついにふたりは、息子とともにスペイン旅行にも出かけるが、そこでトラブルが起きる。人工呼吸器が壊れてしまったのだ。田舎道に車を止め、呼吸器を手動のものに切り替えながら、一家はテーブルを出し、飲み物を飲み始める。

 テディをイギリスから呼び寄せるまでの数日の間、村人たちが集まり、ロビンを囲んでパーティーが繰り広げられる。危機的な状況のはずなのに、それを楽しみに転じて、明るく生きる人生の知恵がそこにある。

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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