事実婚が今後のトレンドに?
慶大卒にして電通出身者/作家で人気ブロガーのはあちゅうさん(32)の「事実婚」報告が耳目を集めている。その相手が、自己申告の出演作品数が9300本を超える有名AV男優のしみけんさん(38)だったことが話題に拍車をかけたのは言うまでもない。
2人を知らない方には、両者の著書名を引くと解りやすいかもしれない。『半径5メートルの欲望』に忠実なはあちゅうさんは『「自分」を仕事にする生き方』を貫くあまり、炎上が多い事でも知られた存在だ。
一方のしみけんさんは、デビュー作の苦い体験を逆手に取って、都内で(文字どおり噴飯ものの)『うんこ味のカレー屋』を開店。『光り輝くクズでありたい』というタイトルの自著も記し、地下クイズ王OBとしてAV男優の枠にとらわれない活躍をみせている。
そんな2人のツーショット写真付きの報告(=交際期間4年)だったゆえ、ネット上では驚愕コメントや批判の声、あるいはしみけんさんの浮気曝露投稿までアップされろという盛り上がりをみせた。
そこには、AV男優への偏見からの「批判は筋違い」とか、はあちゅうさんの英断にも「堂々としている」「愛しているんだな」「彼女らしい」という祝福派の声も多く寄せられた。
一方で、ひそかに注目されたのは「事実婚」という婚姻スタイルだ。今回の「はあちゅう砲」で俄然認識が深まる「事実婚」。誰もが決して初耳ではないのに、その具体的な内容やメリット/デメリットは、どれだけ知られているだろうか?
知っておきたい事実婚のメリット・デメリット
誰もが想う素朴な疑問点に則って調べてみると、なかなか奥ぶかい婚姻のかたちであることが判る。そもそも、昔からおなじみの「内縁」関係と「事実婚」はどう違うのか!? 「意味は同じ」とも言われているが、その格差(?)はいかに――。
イメージするのは、「内縁」の場合、諸々のオトナの事情(本妻が離婚届に判を捺さないとか)が絡んで届けが出せないというニュアンスが濃い。対して「事実婚」は、法律婚(届出婚)は望まないが当事者間で「夫婦関係」を成立させようという意思や合意が濃厚というもの。
では、意思や共感から選ぶ事実婚と、いまだ一般的な法律婚では何がどう違ってくるのか。もっとも、基本的な相違点を列挙してみると、事実婚選びには次のような「覚悟」が必要だ。
①同一戸籍に入る法律婚に対し、事実婚を選んだ夫婦の戸籍は「別々」になる。
②事実婚状態の場合、両者共「法定相続人」とは扱われないため、夫婦間に「相続関係」は発生しない(ただし、遺言による遺贈は可)。
③事実婚の夫婦間に生まれた子は法律上、「非嫡出子」として扱われ、親権は母親側に。戸籍も母親側に入り、法律的な父子関係を成立させるには「認知」手続きが問われる。
④事実婚の夫婦の場合、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の対象外。一方、事実婚同士でも(証明手続きは煩雑だが)社会保険上の「被扶養者」になるのは可能である。
こんなウルトラ事実婚も…
もっと具体的な生活場面での豆知識としては、⑤住民票の記載上「同居人」以外にも「妻(未届)」という二者択一を選べる、⑥改姓の必要がない(免許証や口座/クレジット名義の変更いらず)、⑦夫婦関係を解消しても戸籍に記載されない(=離婚届はいらない)、⑧許可保育園についても「法律婚」と同じ扱い……等々。
こうした相違点を「法律婚はパッケージ型・事実婚はカスタマイズ型」と簡潔にして絶妙な表現で達人解説したのが、漫画家・イラストレーターの水谷さるころさんだ。
再婚相手との事実婚模様を描いた漫画作品『目指せ!夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社刊)を上梓している彼女の、裏技的生活の知恵ぶりがすごい。
自らが抱いていた理想の結婚像に疲れ果てて30歳で離婚した水谷さん。バツイチ同士の再婚当初も「法律婚」を選んだが、出産後に敢えて「離婚届」を提出して「事実婚」を選び直した。
その英断の裏事情は諸々あるが、前掲作品の中で件の親権・認知問題をクリアするため、妻側が「産む時だけ法律婚スタイルでどうだろう?」「さっと法律婚して さっと離婚すれば大丈夫かなと」「(周囲にも)言わなきゃいいのよ」と夫に提案する場面は笑わせつつも瞠目のコマ展開だ。
この婚姻届け→出生届→離婚届というウルトラ技、「これを1日でやる事実婚カップルもいるらしいよ」と説得する妻に、「戸籍の扱いがカジュアル!」と応じる辺りが夫唱婦随、いや婦唱夫随ぶりをうかがわせる。
今回のはあちゅう砲で「事実婚」の響きに魅せられ、わが意を得たりと思われた方(あるいはカップル)はぜひ、水谷さるころさんの漫画を読んでみてはいかがだろう。
(文=編集部)