別れられない理由の多くは……
女性の被害に関しては、エンパワメントかながわが「デートDV110番」という相談窓口を開設したところ、10代の若年世代よりも、30代以上の中堅世代からの相談が4分の3を占めたという。
一般的な人からみれば、DV被害者に「そんな仕打ちをされていながら、なぜ別れないのか?」という疑念を感じやすい。
ところが、この調査であらためて明らかになったのは、30代女性は10代女性に比べ、結婚や出産、経済的な面に加え、「帰るべき家庭がない」点で別れられない理由が多く、被害が重篤になる危険がある――ということ。
また、そのDV被害は、経済的な困窮、生育歴での暴力被害、精神疾患などさまざまな困難と密接にからんでいることがあり、しかも支援が行き届いていない。まさに「家の中」というブラックボックスがゆえに、人目に触れず深刻化していく実態があると示された。
エンパワメントかながわがまとめた小冊子『デートDV白書 vol.4』では、30代女性がデートDVの加害者男性と別れられない理由を、次のように挙げる。
「学校や家に所属しないため、別れたら本当に一人になってしまう不安」「怖いから別れられない~子どもに及ぶ危険」「お金を貸している~30代は100万円以上を貸していることも」「別れて転居したくても、お金がない、ほかに身寄りがいない」……
別れることができない構造への理解を
阿部氏は、「このように簡単に別れることができない構造への理解を広げる必要がある」と訴える。
そのうえで、「相手が承諾してくれないから別れられない」と躊躇する女性には、「別れるのに相手の承諾はいらない。もしもの場合は、ストーカーとして警察に相談できる」と主張する。
阿部氏は「あなたは決して悪くない――このメッセージこそ、つらい思いをするDV被害者に伝えたい」と締めくくった。
なお、「デートDV110番」の電話番号、開設時間などは以下のサイトから。
●エンパワメントかながわ「デートDV110番」
(文=編集部)