現代人の働き方の問題点
ビジネスライフの高橋孝介氏とプログラムディレクターの松尾伊津香氏
ジムの構想に、より具体的な理論を与え、メソッドを提供したのが、その後、参加したプログラムディレクターの松尾伊津香氏だ。
もともと精神医学や心理学に興味を持っていた松尾氏は、ヨガや哲学と出会ってアメリカへ留学。ヨガインストラクターやフィットネス業界での勤務経験などを経て、「自身の考えを本にしよう」と出版の相談を持ち込んだ先で小早川氏と知り合い、ジムの立ち上げに参加した。
小早川氏は、心と体のバランスの重要性には以前から関心があり、サラリーマンの働き方や健康への意識の低さにも「今のサラリーマンの方たちは、休みの日であってもどうしても仕事のこと考えてしまう。パソコンとかスマートフォンが身近にあるからです。考えたくないんだけど考えてしまうというところが結局自分の疲れに繋がっているんだと思います」と警笛を鳴らす。
過度な仕事への依存が、うつ病など深刻な精神疾患へ繋がっている現状があることにも触れ、「これは、ひとつの意見に過ぎませんが、うつ病患者さんが一番最初にすることは、『よく食べて、よく寝て、よく運動して』ということ。つまり、それは、『あたり前の生活をしましょう』ということなんですよ。そうすると、ある程度うつの症状は改善される。でも、そんなあたり前の生活が、今の社会の中ではしにくくなっている」と残念そうに話す。
「これからも働く人の心の問題は、どんどん深刻になると思います。ずっとパソコン仕事。そうすると背中が丸まってくる。胸が閉じて目線がずっと落ちている状態が続く。うつになりやすい姿勢や呼吸の状態が自然と生まれてしまうんです」と松尾氏。
そして「だからこそ、自分でマネージメントする力や、自分の精神状態を保つ努力が必要になっていくんです。体動かすことが大事。胸を開いて、目線を見上げると状況は変わっていなんだけど何となく気持ちは前向きになる。体を整えたら心も勝手に整うんだっていう単純なことが、とても重要なんです」と力説する。
「最高の脱力(ZERO)」とは何か?
「ZERO GYM」のレッスンでは、身体ともに疲れがリセットされた「最高の脱力(ZERO)」の状態を作ることに重点が置かれる。
松尾氏は「まずは目的というものを、しっかり認識することが大切なんです。身体疲労と脳疲労の回復。そのために最高の脱力をしていきましょうって指導しています」と説明する。「寝ても落ちない疲れと私たちは日々向き合っていて、『何であなたは寝ているのに疲れているのか』ってところを一緒に探っていきましょうって」と話す。
「最高の脱力(ZERO)」を作り出すためには、先述の「①ストレッチ(ほぐす)」→「②自重トレーニング(流す)」→「③瞑想・マインドフルネス(緩める)」→「④脱力(抜く)」という4つのステップがとられる。
最初にストレッチと自重トレーニングで体を動かす。「トレーニングを通じて、考え事ができないところまで自分を追い込むんです。その状態を作ると、その後、静寂になってもそわそわせずに、私の声に自然とついてきてくれるようになるんです。そのベースを作るためにストレッチやトレーニングが重要なんです。そこではまず汗をかくくらいまで運動してもらいます」と松尾氏。
室温管理をし、その中で約20分間マット運動を行う。このマット運動の後に瞑想を行い、その後「脱力」の状態を生み出していく。そこでは体温や呼吸の変化が重要なポイントとなる。
「運動の中で体温を上げて、きつさを出す。体温が上がったほうが血流も良くなります。そして、その後で一気に体を冷やすんです」と松尾氏は言う。「その後は呼吸を整えて心拍数を下げて体温を落としていく。体温を下げて副交感神経が優位になる状態を意図的に作るんです。体温と心拍数はかなり計算しながらやっています。そういう状態を作らないとリラックスは生まれないんです」