制御不能のスーパー淋菌!? 薬が効かない「悪魔の耐性菌」 毎年2万人以上が米国で死亡

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「悪魔の耐性菌」で毎年2万人以上が死亡

  

 一方、米疾病予防管理センター(CDC)は2018年4月3日、「悪魔の耐性菌」と呼ばれている「カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)」の感染例が、アメリカの医療機関で2017年の1年間に221例あったことを明らかにした。

 カルバペネム耐性腸内細菌とは、抗菌薬に対して高い耐性を持ち、治療が難しい腸内細菌の一種。医療施設での院内感染が世界中で問題になっている。血液中に侵入すると敗血症などを引き起こし、抗菌薬はほとんど効かず、アメリカでの致死率は5割近いという報告もある。

 CDCによると、アメリカで「悪魔の耐性菌」を含む薬剤耐性菌に年間200万人が感染し、死亡する人は2万3000人に上る。薬剤耐性菌は感染症を引き起こすだけでなく、その拡大を封じ込めなければ、他の細菌に耐性を与えてしまう可能性もある。

 薬剤耐性菌対策は、日本でも喫緊の課題だ。国立感染症研究所によると、2015〜2016年までの1年間で、日本国内でカルバペネム耐性を持つ腸内細菌に1669人が感染し、59人が死亡している。

耐性菌が拡大する原因は「抗菌薬の過剰処方」

  

 薬剤耐性菌が拡大する原因として従来から指摘されてきたのが、「抗菌薬の過剰処方」だ。米疾病動態経済政策センター(CDDEP)の研究によると、2000〜2015年の16年間で、世界における抗菌薬の総使用量は65%増加し、人口1000人当たりの使用量も39%増加している。

 日本政府は平成2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を取りまとめ、「普及啓発・教育」「動向調査・監視」などの6分野において対策に取り組むことに決めた。

 その中で私たち一人ひとりができることとして、国は下のようなことを呼びかけている。

①感染症を予防することで、抗菌薬を必要とする機会を減らす。

②感染症を周りに広げないようにする。

③不要な抗菌薬を処方されないよう、医師が適切な判断できるよう症状を詳しく説明する。

④処方された抗菌薬は、医師の指示通り適切な期間服用する。

 何となくやってしまいがちなのは④だ。「症状が軽くなったから」と薬の服用を自己判断でやめてしまうと、体に残った細菌から耐性菌が出現する可能性が高くなる。こうして生まれた菌が周囲の人々に感染することで、薬剤耐性は広がってしまう。

 現代医学が太刀打ちできない恐ろしいパンデミックを招かないためにも、今こそ私たち自身が、抗菌薬の正しい使い方を身につけていくべきだろう。
(文=編集部)

●参考文献
政府広報オンライン:抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大!一人ひとりができることは?

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