コリスチン耐性遺伝子を持つ多剤耐性菌MCR-1(CDC/Janice Haney Carr)
5月26日、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、すべての抗生物質が効かない多剤耐性菌による初の感染例がペンシルベニア州で発覚したと発表した。
発表によると、尿路感染症に罹った女性(49)は、通常の抗生物質を投与しても完治しなかったため、最後の手段として使う抗生物質コリスチンを投与したが、まったく効かなかったという。
コリスチンは、大腸菌や緑膿菌などのグラム陰性桿菌への強い殺菌作用があることから、複数の抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌への「最後の切り札」となる抗生物質だ。
その後、陸軍病院が遺伝子検査を行ったところ、MCR-1と呼ぶコリスチン耐性遺伝子を持つ多剤耐性菌を米国内で初めて検出。女性は過去5カ月に渡航歴はないが、感染経路は不明だ。
2015年11月、中国で初めて出現したMCR-1は、欧州、アジア、アフリカのほか、多剤耐性菌のゲノムデータベースGenEpid-Jによれば、日本でも見つかっている。
CDCのトム・フリーデン所長は「MCR-1は、抗生物質がまるで効かない悪夢の細菌だ。院内感染すれば、50%の患者が死亡する可能性がある。多剤耐性菌が頻出する前兆かもしれない」と警告を発している。
CDCの推計によれば、多剤耐性菌による感染者は全米で年間約200万人、死亡者は全米で約2万3000人、世界で約70万人。2050年に世界で年間およそ1000万人が死亡すると予測。がん、糖尿病、交通事故などによる死者数を大幅に上回る恐れがある。