電子タバコの安全性の確認が先延ばし?
FDAは2016年8月、従来は規制対象外製品だった「電子タバコ」などについて、製造企業側が安全性に関するデータをまとめ、承認申請を求める規制を発表していた。具体的な期限を「2007年以降に発売された商品は、2018年8月まで」と区切っていたが……。
しかし、1年後の2017年8月、その「期限延期」が発表された。「葉巻が2021年8月まで、電子タバコは2022年8月まで」に申請すればOKとの先延ばしが示されたのだ。
先延ばし策を発表した際、Scott Gottlieb氏(FDA長官)は、AP通信の取材に対して「電子タバコのデータを正当に評価するには、FDAと電子タバコ業界、双方の準備にもう少し時間が必要であると考えた。ゆえの延期である」と弁明した。
これに対し今回、提訴に及んだ学会・団体が問題視(主張)するのが、2009年に成立した「家族の喫煙予防とタバコ規制法(Family Smoking Prevention and Tobacco Control Act)」。改定の先延ばし策は「同タバコ規制法が定めるFDAの権限を逸脱したもの」と提訴側は弾劾しているのだ。
煙に巻かれる日米のタバコ事情
一方、前出のFDA長官は、2018年3月中旬、同じAP通信に対して、以下のような発言をしている。
「電子タバコなどの新型タバコには(批判される反面)、成人が従来の紙巻きタバコをやめるきっかけとして役立つ可能性がある」。そのような考えを述べた上で、「適切な評価を行なわないまま、そのイノベーションの可能性を潰してしまうことは避けたいのです」と。
もちろん、提訴陣の反発は強い――。
それこそFDA自身が「どの製品が禁煙を促すのに役立つのか」、あるいは「どのような販売方法ならば若者をリスクに曝さずに済むのか」を示すべき。その科学的データの蓄積が問われているのに、規制の延期は「それを阻む結果しか生まない」と反旗を翻している。
とりわけ反対派が問題視しているのは「電子タバコ製品には小児やティーンエイジャーをターゲットにしたフレーバー付きの製品も少なくない点」だ。
Scott長官の考えとは対照的に、こうした製品を媒介にタバコ依存症になるリスクのほうを主張し、「FDAは健康に有害な可能性がある、これらのタバコ製品を市場から排除すべきだ!」と手厳しい見解を示している。
「8割以上の大人はタバコを吸わないこと(事実)を教えるとともに、タバコが子どもの目に触れないようにすることが必要だ」
このコメントは、冒頭の静岡市保健所の所長が、新聞紙上で語っている指摘(警鐘)だ。2020年開催の東京オリンピック/パラリンピックが日々近づきある情勢下で、いまだ煙の行方が曖昧な、わが国。FDAの変節と後退も決して「対岸の火事」ではないだろう。
(文=編集部)