手術場面で目を引いたニノの縫合の手際のよさ
佐伯式のオペはオンポンプで行われていました。ニノもオンポンプ、オンビートのオペ(佐伯式)で僧帽弁のオペを成功させましたね。オンポンプ=人工心肺を動かす、オンビート=心臓を止めない方法ということです。
開心術は心臓に空気が入るので、心臓の血をなくすためにオンポンプで行います。心臓を一定時間止めると、血流が止り心臓そのものへのダメージも生じそのあとの回復に時間がかかるのですが、オンビートではそのリスクを回避できるということです。
ニノが演じ「オペ室の悪魔」の愛称をもつ、万年平局員の渡海のナート(縫合)の早いこと。手首を返す感じなどは本物さながらでした。よほど練習したのでしょうか……。そして、現実世界でも論文を書かない臨床医は大学病院にはいらない……、のです。
ニノが劇中で行った、自己心膜を使った大動脈弁形成術は日本でも数カ所の病院でしか行われていないオペ法です。さらに急変した患者さんに電極やエコ―なしで心嚢穿刺もしてしまう渡海、かなりの敏腕ということがわかります。論文を書くことよりも、敏腕の外科医であることの方が才能な気もします。研修医に「邪魔」と言いまくるニノ。これ、私も昔言っていたかも(笑)。
「腕のいい医者は何をやってもいいんだよ」
この言葉の裏には膨大な勉強と経験があるような気がしますね。周りに使える人を数人従える渡海の言葉にはいちいち納得してしまいました。そしてできる男はかっけー!
そして、時に、本当にいます、カトパン(加藤綾子)のようにちょっといやらしそうなコメディカル!(笑)
父親と佐伯教授の関係なども今後明らかになっていく予感。
そして、刺客として送り込まれた帝華大学の高階講師の持ち込んだ「スナイプ」ですが、現段階では大動脈弁置換術では実際このような器具があるようですが、スナイプ自体は存在しておりません。
医療機器は日本の学会や国の機関などで承認されたものしか使用できませんのでご安心を。高階先生は今はやりの低侵襲のオペ(インターベンション)に長けていますが、大手術の熟練度は低い、ということですね。インターベンションが流行の現代では本当にありそうな設定です。それにしてもなぜ帝華大学は、高階先生を新任講師に取ったのかしら?
このドラマの中で唯一、ホッとさせてくれる研修医世良は、急変した患者の前で「担当医を呼んでください!」と叫んでしまいましたね。新鮮だし、研修医あるある、でした。研修医世良は渡海と高階とのかかわりの中で、どのような成長を見せるのでしょうか?
つかみは完ぺき。体内に残ったペアンの画像……、あれは渡海のお父さんでしょうか?
来週も楽しみです!
井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。