働き方改革は誰のため?
加藤厚労大臣は国会答弁で野村不動産の特別指導について触れたが、同社で過労自殺があったことについては触れなかった。
ところが実際は、その特別指導は、同社で起きた過労自殺のために行なわれていたものだったのだ。加藤厚労大臣は「特別指導が公表された時点で男性の労災認定を知らなかった」とコメント。
だが、本当に過労自殺の一件を知らなかったのだろうか? 仮に知っていながら、特別指導だけを取り上げたのなら、悪質な印象操作のそしりを免れない。
前述のように、公表された特別指導に関する報告が記された文書は黒塗りだらけ。これでは、過労自殺の報告を隠蔽したととられても仕方がない。森友問題の文書改ざんに匹敵する疑惑だと考えられるゆえんは、そこにある。
2017年には厚労省が、「裁量労働制」の適用に関して272の事業所に是正勧告や指導を実施したことがすでに明らかになっている。
「働き方改革」の目玉として安倍政権が対象拡大を目指す「裁量労働制」だが、「長時間働くことこそ勤勉」とする日本の企業風土が、一朝一夕に変わるとはとても思えない。
いまのままでは、労働者ではなく、企業の裁量で好きなだけ働かせられる制度となる可能性が極めて高い。働かせるだけ働かせても残業代を増やす必要がない、体のいい人件費削減プランになろうとしている危険性に多くの人が気づくべきだ。
(文=編集部)