「裁量労働制」は本当に労働者のための制度になるのか?(depositphotos.com)
いま国は、森友学園との国有地取引に関する公文書の改ざんの問題で揺れている。3月27日には前国税庁長官の佐川宣寿氏の証人喚問が行なわれ、「答弁を控えたい」の連発による証言拒否が問題に……。
だが、こちらの「資料の黒塗り問題」も、それと同じくらい深刻な事案だ。国が導入を推進する「裁量労働制」の誤謬を、隠蔽するものであるかもしれないのだから。
問題の黒塗り資料は、厚生労働省が3月28日、衆議院厚労委員会の理事会に提出したものである。加藤勝信・厚労大臣が、野村不動産に対する厚生労働省東京労働局の特別指導について報告を受けたものだ。
これが黒塗りだらけ。「2」という番号以外がすべて黒塗りになってるページすらあったのだ。
自殺した社員は残業が月180時間以上
野村不動産に対する特別指導とは何か?
安倍政権が対象拡大を目指す裁量労働制に対し、野党は「その制度が違法に適用されている」と批判してきたが、加藤厚労大臣は「適切に運用していない事業所に対しては、しっかり監督指導を行なっている」と答弁。
その例として、野村不動産の違法適用に対する特別指導を挙げたのだ。ところが、その野村不動産では、裁量労働制を適用されていた社員の過労自殺が起こっていた。
朝日新聞デジタル(3月28日付)によると、その男性社員は50代。転勤者の留守宅を賃貸する業務を担当していて、顧客や仲介業者との折衝に追われていた。
残業時間は、2015年11月後半からの1カ月で180時間以上。体調を崩して16年春に休職。その後、復職したが、同年9月に自殺し、帰らぬ人となった。
野村不動産では全社員1900人中約600人に裁量労働制が適用され、本来は適用できないマンションの営業担当者も、この制度に組み入れられていた。
自殺した男性の労働時間の管理は自己申告に委ねられていて、男性が申告した時間は実際に働いた時間より、ずっと少なかったという。