法医学の世界でも臨床でも大切な「違和感」
胃の内容物の腐敗が進んでいたことが、外観との違和感につながりました。通常は胃腸内の食べ物の量や消化状態によって最後の食事から死亡までの経過時間を推測ができます。
ご飯類、野菜、果物は食後2~3時間、肉類は4~5時間で胃から腸へ移動し、食後6時間以上経過すると胃および空腸上部まではほとんど空になります。
今回は最後の食事から時間もたっておらず、胃の中で食べ物が消化されずに残っていたために腐敗してしまい、悪臭やボツリヌス菌が発生してしまった、ということです。最後の食事から犯行までの時間が問題ではありませんでしたが、こういったことから、被害者の事件直前の行動範囲まで推測できるわけです。
ご遺体があまりにも綺麗であったことと、時間経過から想定される胃の内容物の状態が不一致であったことがミコトの頭に違和感として残っていたのですね。
結果、死亡推定時刻が変わったことで、犯人逮捕につながりました。ここでも法医学の重要さがあらわされていました。爽快!
科学をもとに解明していく法医学の世界では、違和感をもきっちり説明できるようになることで、結論に導くことができるのです。実は臨床でもこの違和感を見逃さないことが非常に大切です。
自分の中で痛みの出方と臨床症状が一致しないとき、あるいは、ご本人の訴えと歩き方がしっくりこない……ということが診断に導くこともあります。
私は時に、「医者の知らない病気は無い」と思うことがあります。これは、われながらの皮肉なのですが、診察医の知識がなければ、患者様の所見や様子から診断に導くことは困難です。どんな豆知識でも人の身体を診る医師は持っていて損はないと思うのです。医学知識はもちろん、社会情勢から天気、気温や流行の風邪、市販薬の成分などすべてのことが診断のヒントになるのです。
ヒアリの存在も記憶に新しいところです。ミコトを見習って、疑問を持ったらありんこでも調べよう!と思ったりして!
そして、今回は昔の中堂のシーンが満載でした。もともと優しい男性の役で見かけることの多かった井浦新さん。そうそう、優しそう!というお顔が見られて光栄でした(笑)。
でも、いくら優秀な法医解剖医でも恋人の解剖をこなすことなんてできるのか?